前編「生成AIで変わる検索行動とコンテンツ評価──ねぎお社長に聞く、今こそ向き合うべきSEOの本質」では、AIがもたらすコンテンツマーケティングへの影響や、Googleの品質評価ガイドラインが定義するコンテンツの原則は変わらない、というお話をサクラサクマーケティング株式会社の根岸雅之社長(以下、ねぎお社長)に伺いました。
後編でも引き続き、ねぎお社長へコンテンツ制作時に留意すべき評価基準や制作プロセスでのAI活用など、コンテンツマーケティング担当者がもつべき視点について、Business Architectsのデザイン&コミュニケーションサービス事業部 事業部長の小山が掘り下げていきます。

インタビューを受けた人
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- ねぎお社長 (根岸雅之)様 取締役社長 COO(サクラサクマーケティング株式会社)
1980年生まれ。大学卒業後、一貫して、広告・マーケティング業界に身を置く。営業をはじめ、SEOコンサルティング、新規事業開発、自社マーケなど幅広い領域を経験し、2015 年に取締役社長に就任。SEOコンサルタントとして大規模サイトから新規サイトまで、売上向上に繋がるコンサルティングを武器に200サイト以上の実績。ねぎお社長のSEOチャンネルをはじめ、YouTube、メルマガ、SNS、書籍を通じて情報発信。
AI普及による検索行動の変容とSEO対策への影響
ユーザーの検索行動が変容する中で、SEO対策はこれまでと同じ施策で、成果を出し続けられるのでしょうか。ユーザーの検索行動の変化と、AI検索の現状についてお聞きしました。
ユーザーの検索行動が変わる「ググる」から「AIに聞く」
小山:AIの浸透によって、「知りたいことの調べ方」が変わってきていると感じています。従来のようにキーワードを手がかりにする検索から、より自然な聞き方へと移行している印象がありますが、実際のユーザー行動にはどのような変化が起きていると見ていますか?
ねぎお社長:まず挙げられる大きな変化は、情報収集の初期段階でGoogleではなくAIを使用するようになったことです。多くのユーザーにとって、「まずAIに聞いてみる」という行為は習慣になりつつあると思います。特に、調べたい情報に対して前提知識があまりない場合は、自然言語で説明してくれるAI回答のほうがより理解しやすいのでしょう。
AIでの情報収集が一般的になった結果、AI回答のソースとなっているWebサイトは閲覧せず、AI上で情報収集が完結するケースが増えていることも大きな変化です。このようにユーザーがWebサイトに流入しにくくなっているという点は、Webサイト運営者にとって非常に大きな課題となっています。
検索行動の変化がSEO対策に与える影響
小山:情報収集の入り口がAIにシフトしていく中で、従来のような検索エンジン経由の流入は得にくくなっている印象です。こうした変化を受けて、これからのSEOはどのように変わっていくとお考えでしょうか?また、検索エンジンへの回帰が起こる可能性についてはどう見ていますか?
ねぎお社長:AIの普及によってカスタマージャーニーが大きく変化している状況を見ると、今後もサイト流入が低下する可能性は高いでしょうね。とはいえ、AIに利便性を感じているユーザーの行動を無理に変えて、検索エンジンを使用させることは難しいと思われます。
SEOをとりまく環境が変わりつつある現在、キーワードによる集客にとらわれていると、淘汰されてしまう可能性があります。AIに対応する「AIO」※「GEO」※「LLMO」※などの新しい概念も登場していますが、それらを包括したものが、次世代のSEOと呼ばれるようになると考えています。
※AIO、GEO、LLMOについて
- AIO(AI Optimization):
- AI検索で自社コンテンツや情報が評価されるようにする施策
- GEO(Generative AI Optimization):
- 生成AIに自社コンテンツや情報が引用・参照されるようにする施策
- LLMO(Large Language Model Optimization):
- ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)が情報を理解し、生成する際に利用されやすくする施策
AI検索エンジンにどう対策すべきか
ユーザーの検索行動の変化に加え、AI Overviewsに見られるように検索エンジンとAIを掛け合わせた仕組みも生まれています。このようなAI検索エンジンへの対策についてお聞きします。
AI検索に向けたコンテンツの最適化と対策
小山:AI検索が浸透する中で、検索結果の構造そのものが変わりつつあります。それに伴って、制作現場でも「これまでのやり方で通用するのか?」という不安の声を耳にします。SEOやコンテンツ制作において、今どのような見直しが必要と感じますか?
ねぎお社長:根本的な話として、従来型の検索エンジンでもAI検索エンジンでも、ユーザーのニーズ自体は変わっていません。
これまでGoogleが提供してきたサービスの本質は、ユーザーの「知りたい」というニーズに対して、大量の情報の中から信頼性の高い情報をマッチングさせることです。AI検索において、この挙動は同じです。例えば、GoogleのAI OverviewsとAI Modeに関する資料(AI Overviews and the AI Mode experiment in Search | Google)を見ると、スパムポリシーや評価基準も同じ内容で、従来のGoogle検索エンジンのコアアルゴリズムをそのままAIに適用していることがわかります。ですから、コンテンツ制作の基本的な考え方を変える必要はないと考えています。
評価基準ではありませんが、AIの自然言語処理によって検索されるわけですから、AIが理解し、参照しやすい形に最適化することが求められます。明確な構造化データの提供や、AIが理解しやすい論理的な文章構成などが重要になってくると思います。
対策としては、自社ブランドを確立する、E-E-A-Tの質を高める、ドメインを強くして検索エンジン以外からも集客を増やすといった、いくつかの施策が考えられます。ただそれだけではなく、本来の売上を作るという目的に立ち返って、より受注獲得につながるコンテンツや自社ブランドを高めるためのコンテンツ制作に注力するといった方向性も視野に入れる必要があるでしょう。
小山:クローラーについてもすでにAIクローラーが登場していますが、従来のクローラーとAIクローラーの違いはどういった点でしょうか。
ねぎお社長:そもそも検索エンジンはWeb上の膨大なデータを取り込み、その中からユーザーのニーズに合った情報を探し出しています。この処理の際にデータを集めてくるのがクローラーと呼ばれる機能で、AIクローラーとはAIを活用しているクローラーの総称です。
AIクローラーは、従来のクローラーよりも柔軟で高精度の情報収集が可能なので、それに対応したコンテンツ制作を意識したほうが良いとは言われています。サイト運営者としては、数あるWebサイトの中でいかにクローラーに見つけてもらい、信頼性のあるコンテンツであると判断されるかが重要ですので。
小山:AIクローラー対策として、llms.txtの記述や構造化データの強化、Q&A形式の導入などが提案されていますが、こうした技術的アプローチにはどのような効果や限界があると見ていますか?
ねぎお社長:こうした対策は一定の効果は期待できますが、個人的にはあくまでも表層的な施策だと考えています。評価基準の本質はコンテンツそのものに価値があるものかどうかであり、その点を逸脱するべきではありません。
AIクローラーが登場したからといって、我々が行うべき仕事そのものが大きく変わることはないでしょうね。
AI検索時代のコンテンツ施策
AI普及によるコンテンツマーケティングへの影響のうち、コンテンツマーケティング担当者が考慮すべき課題の中に、制作プロセスでの活用とAI検索からのコンテンツ保護があります。AI検索時代におけるコンテンツ施策とは、一体何なのでしょうか。
コンテンツ制作時に注意すべきポイント
小山:AIはコンテンツ制作の現場でもすでに様々な形で活用されています。一方、前編でとりあげた品質評価ガイドラインに明示された不正なコンテンツの背景には、制作プロセスにおける不適切なAI活用が実態としてあります。今後のコンテンツ制作における懸念点を教えてください。
ねぎお社長:業界全体の空気感として不適切なAI活用に対する懸念があり、その一例がAIを活用したライティングです。私はAIライティングを完全に否定できる立場ではありませんが、目先の効率化に流されず慎重に考える必要があると考えています。
SEOの歴史を振り返ると、Googleのアルゴリズムは常に進化し続けていて、より厳しい評価基準へと日々アップデートを重ねています。例えば、2015年頃にクラウドソーシングによるコンテンツ制作が流行し大量のコンテンツが作られましたが、やがて品質の低さが問題になりました。その結果、低品質のコンテンツはペナルティを受け、結局作り直すという事態にもなったんです。これと同じようなことが、AIライティングでも起こるのではないかと危惧しています。
小山:AIによるコンテンツ制作は、コストやスピードの面で大きな利点があります。一方で、長期的に見たときの課題もあると思いますが、どのあたりに注意が必要でしょうか?
ねぎお社長:長期的に考えた場合、本当にAIライティングで品質評価ガイドラインに沿った「価値あるコンテンツ」を生み出せるのか、という点が疑問です。
例えば今このインタビューに時間をかけているのも、単なる情報提供ではなく、本当の意味でユーザーにとって価値あるコンテンツを届けたいと思っているからです。AIライティングが適している場面もあるかと思いますが、今やっているようなインタビューや深い洞察を必要とする記事の執筆ではやはり人の力が必要でしょう。だからこそ、然るべきコストや労力をかけて制作した、本質的に品質が高いコンテンツは長期的な競争力をもつと考えています。
ただ一方で、そうやって苦労して作成したコンテンツがAIにインデックスされることで、サイト自体はクリックされずに表面的な情報だけユーザーに届いてしまうという点も課題の一つです。
AI検索時代のコンテンツ保護と共存
小山:AIに情報だけ切り取られるという問題を回避するために、インデックスをブロックすべきという意見もあります。そもそもサイト流入を促すためのコンテンツですからそのような意見も理解できますが、インデックスされた場合のメリット、デメリットをふまえて判断すべきですね。AI検索からのコンテンツ保護についてはどのようにお考えですか?
ねぎお社長:私としては、基本的にGoogle、AIのいずれに対してもブロックしないほうが良いと考えています。
この問題は、強調スニペット(フィーチャードスニペット)に表示される情報で、ユーザーが満足してしまう「Zero-click search(ゼロクリック検索)」と同じ状況です。この対策として、強調スニペットへの表示をブロックするソースコードが開発されており、AIの検索もロボットテキストのような制御プログラムでブロックできます。
ただし、ブロックすることが総合的にプラスになるかは一概には言えません。機密情報などの公開したくない情報は当然ブロックすべきですが、ブロックすれば検索エンジン経由の集客はなくなります。
やはりインデックスの大きなメリットは、ユーザーとの接点が増えることです。例えば、弊社のコンテンツや私のSNSなどの情報発信から「サクラサクはSEOに詳しい会社」というシグナルをGoogleやAIが読み取れば、SEO関連での検索表示や引用される機会が高まります。
一方で、このようなマスコミュニケーションを必要としない場合もあります。例えば、一見さんお断りで常に予約満席のお寿司屋さんは、インターネット上で集客する必要がありません。むしろ、インデックスされると問い合わせなどが増えて困る場合もあるでしょう。
つまり、AIのインデックスをブロックすべきかどうかはマーケティング戦略によっても変わるため、総合的な視点で判断することが重要です。
AI検索時代でも「質の高いコンテンツマーケティング」の本質は変わらない
小山:最後に、AI検索時代に向き合っていくコンテンツマーケティング担当者の皆さまへ、メッセージをお願いします。
ねぎお社長:Googleの品質評価ガイドラインの話を通して、AI検索時代においてもコンテンツのオリジナル性や独自性が重要であるとお伝えしてきました。
コンテンツマーケティングの原点は、自社の強みを発信することです。コンテンツ制作時に、SEOありきの検索上位表示を目指すのではなく、自社の優位性や強みを軸に何を確立したいのかを考えるべきです。
そして、SEO対策=Google対策と考えがちですが、SEO対策は突き詰めればユーザー対策であり、この視点を忘れてはいけません。Googleは一貫してユーザーに向き合ってきているので、Googleの指針に合わせれば自然とユーザーに寄りそう形になるはずですが、表層的なSEOに偏ってしまうとコンテンツの質の低下につながります。
AI検索時代においても、コンテンツマーケティングの本質は変わりません。検索の先にいるユーザーを見据え、自社の強みを伝える価値あるコンテンツの提供を目指していただきたいと思います。
編集後記
後編では、ユーザーの行動変化やAI検索エンジンの登場など、AI普及によるコンテンツマーケティングへの影響についてお話を伺いました。根岸雅之社長(ねぎお社長)は「AI検索時代になったとしても、ユーザーにとって質の高いコンテンツを追求するという大原則は揺るがない」と言います。
- 【前編】生成AIで変わる検索行動とコンテンツ評価──ねぎお社長に聞く、今こそ向き合うべきSEOの本質
- 【後編】AI検索時代に差がつく!今こそ見直すSEOとコンテンツマーケティング──ねぎお社長と考える、価値を届けるSEO戦略(本記事)
コンテンツマーケティングにおいてAI活用がスタンダードになりつつありますが、自社の強みとユーザーのニーズを正確に把握し、価値あるコンテンツを提供するという本質を今一度見直す必要があるのではないでしょうか。
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