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マーケティングと営業の対立を解消するツールと運用事例を紹介

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プロフィールアイコン(イラスト):マーケター 信谷
信谷マーケター(ビジネス・アーキテクツ)

前職では複数社にてコーポレートIT部門の支援サービスに従事。2018年よりBAに関わるようになり、2021年に入社。前職時代の知見を活かし、MAツール導入・運用支援サービス開発プロジェクトに参加し、ゼロからの新サービス立上げを経験。現在はBAsixsサイトのコンテンツ企画から編集業務を担当。

営業部門とマーケティング部門は対立しがちという話を聞いたことはありますか?

対立とまで行かなかったとしても、完全なる分業で部門間の協力はできていないという企業は多いのではないでしょうか。弊社も昨年までは、マーケティング部門と営業部門の連携には、多くの課題を抱えていました。

今では弊社のマーケティング部門と営業部門が協力し、同じ目標に向かって施策立案から実行まで取り組んでいます。それでは、どのようにすれば両部門が相互に助け合えるようになるのでしょうか。弊社が取り組んできた施策や、実現には欠かせなかったツールについても紹介します。

マーケティングと営業の対立を解消するツールと運用事例を紹介

なぜ営業部門とマーケティング部門は対立しやすいの?

営業部門もマーケティング部門も、会社の業績に貢献するという共通の目的に向かっているはずですが、分業しているがゆえに対立している企業が多くあります。

営業部門とマーケティング部門が対立する根本の原因は3つあります。

  • 自部門のKPI達成に意識が向きすぎて、本来の目的をないがしろにしてしまう
  • ターゲットの定義が統一できていない
  • マーケティング部門から営業部門に引き渡すリード(見込み顧客)の基準を合意できていない

次に、それぞれの原因について説明します。

対立の原因1:自部門のKPIにしか関心がない

はじめに、一般的な購買プロセスを例に説明します。

「課題の気づき・認知」→「情報収集・学び・関心」→「比較・検討」→「購入・契約」という購買プロセスのうち、マーケティング部門と営業部門が担当している業務とKPI例を図に表すと以下の通りです。

購買プロセス、マーケティング部門と営業部門が担当している業務、KPI例

前提となる、マーケティング部門と営業部門の対象・業務・目的を簡単に説明します。

まずは購買プロセスの内、「課題の気づき・認知」→「情報収集・学び・関心」→「比較・検討」の段階にいるリードへアプローチし、次の段階へ進むための施策を担当しているマーケティング部門です。

  • 目的:
    潜在顧客が抱える課題を気づいてもらう、潜在・顕在顧客に見つけてもらう、顕在顧客に自社商品なら課題を解決できそうと期待してもらう、リードに自社の魅力を知ってもらう、リードが困ったときに1番に自社を思い出してもらう、自社のファンになってもらう、自社商品を紹介したくなってもらう
  • 対象:
    自分の課題に気づいていない潜在顧客、課題に気づいたが解決方法を知らない顕在顧客、失注顧客、過去に取引があった休眠顧客
  • 業務:
    リード創出(将来的に顧客となり得るリードを獲得すること)、リード育成(各段階のリードのニーズに合わせた情報提供、定期的な接点作りによって良い関係性を構築する)
  • KPI例:
    訪問者(UU)数、CVページのPV数、CV率、リード数、リピーター数、商談化率

次に、購買プロセスの内、「比較・検討」→「購入・契約」の段階にいるリードへアプローチし、全体の目的達成に関わる営業部門です。

  • 目的:
    売上(利益)を獲得する、売上を増やす
  • 対象:
    マーケティング部門から引き渡されたリード
  • 業務:
    リードの課題をヒアリングする、提案資料を作成する、提案する
  • KPI例:
    商談数、見積発行数、成約数・成約金額

ここで注目すべき点は、営業部門のKPIには成約数・金額が一般的に設定されるため、目標の売上を達成できない責任は、営業部門とされる場合が多いことです。

しかし営業部門が持つ「商談数」や「成約数」というKPIは外的要因(企業の外で起こっている政治・経済・社会・技術における変化や市場・競合他社・消費者の動向による影響)だけでなく、内的要因である前工程の影響を受けてしまいます。

例えばマーケティング部門が営業に引き渡すリードの内、含まれているターゲット層の割合が少ないと、営業部門のKPIである「商談数」や「成約数」の達成は最初から厳しくなります。

一方、マーケティング部門が持つ「リード数」というKPIは、外的要因はあっても内的要因(自社規則や他部署からの影響)はありません。「リード数」を増やすことにはコミットしますが、営業部門に引き渡した後、実際に商談や受注に繋がったのかということには責任が無い状態です。

リード数にばかり意識が向きすぎると、本来であればリード育成が必要なリードも、営業に引き渡してしまいます。これが、営業部門が「マーケティング部門から受け取るリードの質が悪い」という不満を抱える原因になってしまいます。

対立の原因2:「ターゲット」の定義が統一できていない

営業部門から「マーケティング部門から受け取ったリードの品質が低い」と言われる原因は、そもそもターゲットの定義が両部門で揃っていない可能性があります。

せっかくリードを集めても、ニーズや求めている対応(サポート範囲・費用感・スピード感・安定感)がズレていると、受注に至る確率は低くなってしまいます。将来的に受注する可能性が高い、自社が優先して狙うべきターゲット層はどこなのか、予め認識をすり合わせておくことが必要です。

例えば、以下のようなターゲットの定義を両部門の共通認識として共有できていないと、各部門がそれぞれの基準でリードを判断してしまいます。

  • 企業規模
  • 売上高が安定または増加している
  • 売上高や資本金が一定金額以上で、投資体力がある
  • 自社商品が解決できる課題を持っている業界・企業文化

マーケティング部門が過去数年間のデータや他社の事例を参考に判断して、営業部門にリードを引き渡してしまうと、今の自社が狙っているターゲットとズレてしまう可能性があります。

結果として、商談に進んでも受注に至らなかったり、成約後すぐに解約されてしまうなど、業績貢献に繋がらない状態が続いてしまいます。

対立の原因3:「ホットリード」の定義が統一できていない

マーケティング部門から営業部門に引き渡す状態になったリードをホットリードと言います。

売上目標を達成するためには、まずはマーケティング部門と営業部門が集まって、ホットリードの定義に合意を得る必要があります。基準より検討度合いが低いリードを営業に引き渡す事が無くなり、営業の負担を減らせるからです。

例えば、営業部門は「比較・検討」段階の中でも特に選択肢を2〜3に絞り込み、トライアル申込や詳細な見積もり依頼があった「検討後期」のリードをマーケティング部門から受け取りたいと思っています。

しかし、マーケティング部門からは「比較・検討」段階の中でも、比較表や製品カタログをダウンロード後にサイト再訪問が無い「検討初期」のリードや、「情報収集・学び・関心」段階のメルマガ登録があったリードを営業部門に渡してしまうということが発生します。

営業から見ると、まだホットリードになっていないのでリード育成を続けてほしい状態なのに、マーケティング部門から渡されるので、両部門の関係が悪くなってしまいます。

営業とマーケティングの関係を良好にする4つの方法

それでは、どうすれば営業とマーケティング部門の関係を改善できるのでしょうか。4つの解決方法を紹介します。

1.マーケティング担当者がリードの理解度をあげる

マーケティング部門は、主に市場動向や競合調査、自社の分析・解析データなどの数字を見ています。実際のリードや受注した顧客とデータがかけ離れていても、気づける機会が少ないです。

営業担当者と同じ視点で実際にリードと対面する機会を意識的に作ったり、受注・失注の理由を分析することで、リードへの理解度・解像度を上げることが可能です。

リードの理解度をあげるための方法を3つ紹介します。

リードの理解度をあげるための3つの方法

  • 商談にマーケティング担当者も参加する
    リードの検討状況や温度感を直接聞くことで、営業へ引き渡す基準に達しているか、営業にとって進めやすく現実的な基準になっているかなど、ホットリードの定義を考えるきっかけが得られます。また、リードがどんなことに疑問や不安を持っているか生の声を拾えます。
  • 受注時に、決め手を必ず営業担当者にヒアリングしてもらう
    特に決裁担当者様が評価した点を伺うことで、自社の強みに気づき、マーケテイング施策や自社のサービス・商品開発に活かすこともできます。
  • 失注時も、失注理由を可能な限り営業担当者にヒアリングしてもらう
  • 他社と比べて何が足りなかったか、他社のどういう点を評価したかという情報を収集・分析し、マーケテイング戦略の見直しに活かせます。また、失注要因を営業部門内で共有できれば営業部門全体の生産性向上にも繋げられます。

リードの理解が深まったら、次はコミュニケーション設計です。

2.リード理解に基づいたコミュニケーションを設計する

商品・サービスごとにペルソナとカスタマージャーニーをつくることが、リード理解への一番の近道です。

ペルソナは選定者(情報収集・比較表作成・社内稟議作成担当者)と決定者、決裁者の3つを設定しておくと、カスタマージャーニー作成時に必要な課題・情報・コミュニケーションチャネルを考えやすいです。

ペルソナとカスタマージャーニーについての詳細は、以下記事をご覧ください。

ペルソナとカスタマージャーニーマップとは?メリットと活用法を紹介 | BAsixs(ベーシックス)

営業部門とマーケティング部門が協力してペルソナとカスタマージャーニーを作って持ち寄り、レビューしあうことで、共通理解・共通言語を持つことができます。また、外的要因・内的要因も日々変化しているため、最低でも1年に1度は見直しをしましょう。

更に、継続して契約している顧客や、失注・解約した顧客にヒアリングしたら、より具体的なペルソナを設定できます。

3.両部門の作業を可視化、共有する

進捗や成果などを共有するためには、通常は報告レポートを作成します。複数のツールやシステムに計測データがある場合は、報告レポートの作成に手間がかかってしまいます。準備に手間がかかると、本来注力すべき業務に割く時間が減ってしまいます。

そこで両部門のKPIのような、定点観測するデータについては、常に最新のデータを表示するダッシュボードを用意しておくと、報告レポート作成の手間を削減できます。定点観測するデータ以外のデータのうち、大きく変化した数字やマイナスの数字を報告レポートにまとめるだけで済みます。

データを元に、以下の3点を確認します。

  • 現在の戦略やKPIを変更する必要が無いか
  • ホットリードの定義を見直す必要が無いか
  • ターゲットやペルソナが実際のリードから大きくかけ離れていないか

KPIが未達の場合は、各部門が持っている情報を出し合い、原因を調査・分析し、仮説を立てて、全体の戦略を見直したり調整したりする必要があります。そして各部門で追加の施策や取り組みのスケジュールを決めます。

KPIは目的を達成するために分解した目標です。売上目標を達成するためには、まずお互いのKPIの進捗や目的の達成率に関心を持つ仕組み作りから取り組んでみてはどうでしょう。

例えば月に1度の全社会だけでなく、部門の週次定例会議で両部門のKPI進捗を共有するとよいと思います。部門メンバー全員がKPIを目にする回数を増やすことならすぐに取り入れられるのではないでしょうか。

4.両部門の知見を出し合い、コンテンツを設計する

まず、これまで受注した顧客の流入経路を洗い出します。洗い出した複数の流入経路の内、検討度の高いターゲット企業が多く流入している経路を優先して強化します。

検索エンジンからの流入が多い場合は、ターゲットに自社のWebサイトを見つけてもらうための施策を考えます。ユーザーのニーズや悩み、検討段階に合わせてユーザーにとって有益なコンテンツを定期的に公開・更新しましょう。

コンテンツを使ったマーケティング手法はWeb広告と違って1度作成すると長期的に効果を発揮しますが、最新の情報に更新されているか、新しい記事の公開頻度はどれくらいかもユーザーは見ているため、「定期的に」公開・更新する必要があります。

ただしコンテンツの企画をマーケティング部門だけでしないことも大切です。必ず営業部門とマーケティング部門の知見を踏まえて、自社のターゲットがほしい情報に合わせたコンテンツを企画しましょう。普段からリードの課題や、自社が提供できる価値と向き合って提案活動をしている営業部門の知見を活かせないのは勿体ないです。

コンバージョン(問合せ・会員登録・デモ申込・資料請求など)を促すためには、自社独自の情報を含める必要があります。社内の専門知識・経験があるメンバーの協力も必要なので、コンテンツ作成は簡単なようでとても手間がかかります。

コンテンツを作る上でネタ切れは怖いものの1つです。営業部門に限らず、直接お客様に接する社内メンバーに、最近お客様から相談されたことを聞いて回ると、良い企画が生まれやすいのでおすすめです。弊社では、「記事アイディア募集フォーム」「持ち込み企画応募フォーム」も用意しています。

リードの背中を押す「最後の一押し」のためには、実績・事例ページや顧客インタビューなどを増やす必要があります。

お客様の名前を出した方が実績の信ぴょう性や伝わりやすさは上がりますが、お客様企業名を出す許可を取るためには、お客様側のメリットが無いと通りづらいため、交渉が必要です。難易度は高いですが、契約・購入後の具体的なイメージが出来るため、優先して取り組みたい施策の一つです。

商談に参加して得たリードの意見や、リードが持っている懸念点や他社と迷う点などの声を営業部門からも集め、「よくある質問と回答」をコンテンツにすると、比較・検討段階のリードに響きやすいです。ダウンロード資料にまとめたり、解説セミナーを開催することで、問合せよりもハードルが低いコンバージョンポイントをWebサイトに設置できます。

営業部門とマーケティング部門の連携にはMAの活用が効果的

MA(マーケティングオートメーション)とはマーケティングに関する施策の内、定型化できる部分を自動化することで、扱うリードの数が増えても作業量を抑えることができます。

例えば施策成果のレポートを作成したり、KPIや施策の進捗をダッシュボードでまとめて表示することができます。報告する相手や目的毎にダッシュボードを設定しておけば、報告レポート作成の手間を大きく削減できます。

また、お問合せや資料ダウンロードなどのCVに至ったリードの情報をMAに蓄積できます。どのコンテンツで流入したか、特にCVに貢献したコンテンツや施策は何かが分かるため、どんな状態の人にどのコンテンツが効果的かを分析出来ます。

分析結果から他にどんな情報提供が必要か、既存のコンテンツの内なにを変更すべきかが見えてきます。

このように施策のデータを分析し、どんな仮説が立てられるか、次の施策にどう生かすかなどの、本来時間をかけて取り組むべき業務に注力できるようになります。

さらにSFA(営業支援ツール)やCRM(顧客関係管理システム)、アクセス解析ツールなどと連携することで、複数のツールに散らばっているデータをMAに集約し、より高度な分析もできます。管理面でも、1つのツールを複数部署で使うことで、権限管理や請求管理も1つにまとめることができます。

弊社のチーム連携の取り組み事例

ビジネス・アーキテクツでは昨年まではマーケティング部門と営業部門が別部門で、それぞれの部門で設定したKPIを各々で測定し、施策の検討や改善を回していました。

両部門間で上手く連携出来ていないと感じていたため、まずは週次会議で各々のKPIの進捗を共有し、気づき、施策のアイディアなどの意見を交換しました。しかし、直近行った施策の成果を共有するばかりで、目的の達成状況については殆ど話さず、達成率の低いKPIがあっても他のKPIの見直しなどに繋げられませんでした。

そこで、今年の1月から2つの部門を統合することにしました。最初は戸惑いが多かったですが、同じKPIを設定し、マーケティング戦略を一緒に考えることで、徐々にチームになったと思います。

現在は元営業部門のメンバーも同じチームのため、問合せに繋げるためのコンテンツの企画から作成までを担ってもらっています。1つのチームになったことで、当たり前ですがコミュニケーションの密度が格段に上がり、1つの目的に向かうという意識が強くなったように感じます。

顧客の生の声を反映したコンテンツやメールを作成しやすくなったり、コンテンツ作成の実際の業務理解が深まった状態でお客様への提案ができるなど、お互いに良い効果が出ています。

また、昨年と比べるとWebサイト経由の新規のお問合せ件数が25%増え、見積提示額は2.59倍に増えました。お問合せ内容を比較しても、弊社が力を入れているサービスに対するお問合せ、例えばグローバルサイトやアクセシビリティ対応などに関するお問合せが増えています。

今回ご紹介した、営業部門とマーケティング部門とを統合することは、解決方法の一つにすぎません。2つの部門をそのままに、両部門の連携をスムーズにしたい場合は、まずはホットリードの定義がしっかりと合意が取れているか、見直してみることをおすすめします。

ビジネス・アーキテクツでは、Webサイトの構築・運用における多くの実績と経験から、お客様の課題に合わせたご提案を得意としています。Webサイト運用の組織運営についても、様々なご提案が可能です。ぜひご気軽にお問合せください。