BAsixs(ベーシックス)

BAsixsは、ビジネス・アーキテクツが運営する
「あたりまえ」をアップデートしつづけるメディアです。

Webサイトのアクセシビリティとは?意味や達成基準を基礎から解説

読了目安 : 12

  • 投稿日 :
  • 最終更新日 :

この記事を書いた人

プロフィールアイコン(イラスト):ディレクター 富本
富本セールス&マーケティンググループ/ディレクター(ビジネス・アーキテクツ)

地元・愛知の印刷会社や広告会社にてディレクター・フロントエンドエンジニアとしてWeb制作に携わる。2014年頃、フロントエンドエンジニアとしてBAに入社。現在、自社コーポレートサイトやオウンドメディアのマーケティングに携わっている。また、長期にわたりウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)のWG4への参加も。好きなキャラクターはリラックマ。

Webサイトを制作・運用するうえで、近年あらためて重要性が高まっているのが「アクセシビリティ」です。
アクセシビリティへの配慮は、ユーザー体験の向上だけでなく、法制度への対応や企業の信頼性にも直結するテーマとなっています。

本記事では、Webアクセシビリティの基本的な考え方から、WCAG・JISといった基準の位置づけ、企業サイトで意識すべき達成レベルや具体的な対応ステップまでを、初心者にもわかりやすく整理します。

Webサイトのアクセシビリティとは?意味や達成基準を基礎から解説

アクセシビリティとは何か?「誰もが使える」Webサイトの考え方

アクセシビリティは「アクセスのしやすさ」を意味する

アクセシビリティとは「情報や機能にアクセスしやすい状態」を指し、Webサイトを訪問するすべての人の利用体験に大きく関わります。
せっかく魅力的なコンテンツがあっても、アクセシビリティが低いとユーザーの満足度が下がってしまいます。

一方、「ユーザビリティ」はユーザーの使いやすさを示す言葉で、アクセシビリティとは異なる視点を持ちます。

アクセシビリティとユーザビリティの違い

アクセシビリティは「情報にアクセスできるか」、ユーザビリティは「アクセス後にどれだけ使いやすいか、見つけやすいか」の違いです。

アクセシビリティとは
視覚や聴覚に障がいのある人や高齢者のための配慮というイメージがありますが、実際はすべての人に関わる課題です。たとえば、メガネを忘れた日や、騒がしい場所での閲覧など、環境によって一時的に情報へのアクセスが困難になることがあります。

このように障がい者や高齢者だけではなく、あらゆる人や状況に意識を向けることが、アクセシビリティに向き合う第一歩になります。

ユーザビリティとは
ユーザーが情報の取得・理解・操作をスムーズに行える状態を目指す取り組みです。
アクセシビリティと重なる部分も多いため、それぞれの違いを理解し、両方の向上を目指すことが重要です。

アクセシビリティとユーザビリティの関係を示した図。すべてのユーザーが情報にアクセスできる状態を土台に、その上で使いやすさや満足度が高まるという段階的な関係を、利用者の多様な状況とあわせて整理している。

障がい者だけの話ではない:すべての人に関係する理由

アクセシビリティは、特定の人だけでなくすべてのユーザーの体験を向上させるための設計指針です。

たとえば、このような状況はありませんか?

  • スマートフォンで片手がふさがっているとき
  • まぶしい屋外で画面が見づらいとき
  • 騒がしい場所で音声が聞き取りづらいとき

こうした一時的な状況や使用環境の違いも、アクセシビリティの課題として捉えることができます。

また、検索エンジンのクローラーも情報へのアクセス性を評価します。アクセシビリティを意識した設計は、SEOやサイト全体の使いやすさにも好影響を与えます。

アクセシビリティは「誰かのため」でありつつ、結果としてすべての人の快適なWeb体験につながります。だからこそ、Webサイトやコンテンツの提供者・利用者の双方にとって重要な視点なのです。

なぜ今、Webアクセシビリティが重要なのか

社会背景と利用環境の変化

私たちの暮らしや働き方が急速にデジタル化する中で、インターネットは情報収集やサービス利用に欠かせない社会インフラとなりました。Webサイトは企業とユーザーをつなぐ重要な接点であり、誰もが等しくアクセスできることが、企業の信頼やブランド価値にも直結します

とくに日本では、高齢化の進行や、外国人労働者・留学生など多様な背景をもつユーザーの増加により、「誰にとっても使いやすい」Webの必要性がますます高まっています
高齢者の中には、視力や聴力が衰えた人や操作に慣れていない人も多く、画面の文字が読みづらかったり、複雑なUIに戸惑ったりするケースが少なくありません。

スマートフォンや音声アシスタントの普及で利用環境は多様化し、通勤中や屋外など、想定しきれないほど多様な状況で使われるようになりました

こうした変化の中で、「すべての人」にとって使いやすいWeb設計が求められているのです。アクセシビリティは、その第一歩としてますます重要なテーマとなっています。

Webの利用環境が多様化していることを示した図。PCやスマートフォン、音声アシスタントなどの利用端末の違いに加え、高齢者、外国人、障がいのある人といった利用者の多様性、屋内・屋外・移動中など利用状況の違いを整理して示している。

法制度・ガイドライン整備による企業への影響

法制度やガイドラインの整備により、企業にとってもアクセシビリティは「できれば対応したい」から「当然に取り組むべき課題」へと変化しています。

2024年4月施行の「改正障害者差別解消法」により、民間企業にも「合理的配慮の提供」が義務化されました。
これにより、障がいのあるユーザーがWebサービスを利用する際に不利益を被った場合、企業側には可能な範囲での対応義務が法的に課されることになります。

なお、現時点では罰則は設けられていないものの、行政による助言・指導・勧告などの措置が行われる可能性があり、企業の社会的信用やレピュテーションにも影響しかねない状況です。リスク管理の観点からも、アクセシビリティへの対応は看過できない経営課題となりつつあります。

また、公共機関に義務付けられている「日本産業規格 JIS X 8341-3:2016(WCAG 2.0をベースにした国内規格)」は、民間企業でも自主的な対応指針として広く活用されています。とくに自治体・医療・教育・金融など公共性の高い業界では導入が進んでおり、これらの分野と関わる制作会社やベンダーにも、同様の配慮が期待されています。

さらに、2024年に総務省が公開した「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2024年版)」では、現行のJIS X 8341-3:2016を基本としつつも、今後はWCAG 2.2を見据えた対応を進めていくことが明記されています。
JIS規格についても、WCAG 2.2への対応を見据えた改訂に向けて動きが進んでおり、2025年には「JIS X 8341-3改正原案作成委員会」が発足しています。

こうした動向を踏まえると、企業は「現行JIS準拠で十分」とせず、将来的な規格更新にも対応できる体制づくりが求められます。単発的な対応ではなく、継続的な改善と運用プロセスにアクセシビリティを組み込む視点が欠かせません

今後は、CSR(企業の社会的責任)やSDGsの観点からも、アクセシビリティへの取り組みがブランド価値や採用力、取引機会に直結する時代になっていくでしょう。法制度への対応にとどまらず、自社の競争力を高める戦略の一環としてアクセシビリティを捉える企業が増えています。

WCAGとJISってどうつながってる?Webアクセシビリティの基準とその役割を解説

WCAGやJISという言葉を聞いたことはあっても、「どちらを基準に考えればいいのか」「どう使いわけるのか」がわかりにくいと感じたことはありませんか?

アクセシビリティを高めるためには、感覚的な配慮だけでなく、明確な基準に基づいて設計・改善を進めることが重要です。
その指針となるのが、国際基準である「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)」と、それをもとに策定された日本の規格「JIS X 8341-3」です。

これらのガイドラインには、すべてのユーザーが情報にアクセスしやすくするための考え方とチェック項目が体系的に整理されています。

本章では、WCAGとJIS X 8341-3がそれぞれどのような役割を持ち、どのように関係しているのかを解説します。

WCAGとは?アクセシビリティ対応の出発点となる国際基準

Webアクセシビリティの出発点となるのが、W3C(World Wide Web Consortium)が策定した「WCAG」です。
誰もが利用できるWebコンテンツのために必要な原則や具体的な基準が示されており、世界中の企業や政府機関で採用されています。

各バージョンの違いや達成レベル(A・AA・AAA)、企業方針との関連については、以下の記事でも紹介しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。

アクセシビリティ確保の指標となる文書「WCAG」と企業の「アクセシビリティ方針」を紹介

JIS X 8341-3とは?WCAGをもとにした日本独自の基準

日本国内では、WCAG 2.0をベースに作られた「JIS X 8341-3:2016」が、Webアクセシビリティ対応の基準として広く用いられています。とくに公共機関ではこのJIS準拠が義務化されており、民間企業でも対応方針の指針として活用されています。

WCAG・ISO・JISの関係と改訂の流れを示した図。W3C勧告のWCAGは2.0から2.1、最新の2.2へと改訂され、ISO規格(ISO/IEC 40500)を経て、日本の国内規格JIS X 8341-3として策定・更新されている。現在はWCAG 2.2に対応するISO/IEC 40500:2025と、JIS X 8341-3の改訂版(202X予定)へとつながる構造になっている。

このJISでもWCAG同様に、達成レベル(A・AA・AAA)や試験方法、試験結果の公開手順までが明記されており、アクセシビリティ対応の具体的な達成状況を示す基準として有効です。

さらに、「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2024年版)」では、現行のJIS X 8341-3:2016を基盤に据えつつ、WCAG 2.2相当の新たな達成基準への対応を進めるべきことが示されています。
JIS規格そのものも、今後改訂される見込みで、最新の国際標準(WCAG 2.2)へのアップデートが予定されています。

企業としては「今のJISに対応していれば十分」とせず、今後の変更を見越した柔軟な設計・運用体制を整えておくことが重要です。

関連する最新動向は、以下の記事の「最近のウェブアクセシビリティ関連情報」の章で紹介していますので、あわせてご覧ください。

簡単解説!機会損失を防ぐためのウェブアクセシビリティ向上ガイド

アクセシビリティ対応はどこから始める?達成基準のしくみとチェック項目

「A・AA・AAA」達成基準のしくみと考え方

Webアクセシビリティの達成基準は、「A(最低限の基準)」「AA(望ましい基準)」「AAA(発展的な基準)」の3段階で構成されており、段階的に取り組める設計になっています。

たとえばWCAG 2.2では、「A」は30項目、「AA」はさらに20項目、「AAA」はさらに28項目追加され、配慮の範囲と難易度が順に高まっていきます。

WCAGの達成基準レベルの構成を示した図。アクセシビリティ対応は3段階で、レベルAは最低限の基準(30項目)、レベルAAは望ましい基準(Aに加えて20項目)、レベルAAAは発展的な基準(AAに加えて28項目)となっており、段階的に対応範囲と難易度が高まることを表している。

企業サイトでは、どの達成基準を目指すべきか?

総務省の「みんなの公共サイト運用ガイドライン」では、公的機関には「AA(望ましい基準)」準拠が求められていますが、企業サイトではサイトの目的やリソースに応じて、柔軟に対応レベルを検討するのが現実的です。

たとえば、情報発信を主目的とするコーポレートサイトやサービス紹介サイトでは、まず「A」レベルの項目を確実に満たすことが基本的な目標になります。
一方、金融・医療・教育・公共性の高い業界に属する企業、またはサービス利用がWeb上で完結するようなサイトでは、より高い配慮が求められ、「AA」以上の対応が検討されることもあります。

大切なのは、最初から完璧を目指すことではなく、自社の状況に応じて無理のない範囲から取り組み、段階的にレベルアップしていく姿勢です。

主なチェックポイント:達成基準A・AAの具体例

「達成基準」とは、実際にどんなことをすればよいのか?WCAGの各レベルごとに定義された具体的な対応項目を、一部抜粋して紹介します。
以下は、WCAG 2.2の構成を踏まえたA・AAレベルのチェックポイント例です。

■ Aレベル(30項目:最低限のアクセシビリティ確保)

  • ページタイトルや見出し構造を正しく設定する
  • 適切な代替テキストをすべての画像に設定する
  • 色だけに頼らない情報伝達を行う
  • キーボード操作で全機能が使えるようにする
  • 入力フォームに正確なラベルとエラーメッセージを設定する

■ AAレベル(A+20項目:より広いユーザーへの配慮)

  • コントラスト比(4.5:1以上)を確保する
  • テキストを画像でなく生の文字として表示する
  • UIの一貫性を保つ(ナビゲーション、ラベルなど)
  • モバイル端末でもズーム・拡大表示を制限しない
  • フォーカス移動の可視化など、操作中の状況がわかるようにする

なお、上記は達成基準の一部を要約したものです。全項目の確認と運用方法の整理は、企業ごとのガイドライン作成が有効です。
当社での対応事例もございますので、ぜひご覧ください。

アクセシビリティガイドラインの更新事例 K社様

アクセシビリティ対応は「一度きり」ではない|企業がアクセシビリティを進めるためのステップ

アクセシビリティへの対応は、「制作時に一度チェックすれば終わり」ではありません。Webサイトは運用・更新を重ねる中で内容が変化していくため、継続的な取り組みが欠かせないテーマです。

たとえば、

  • 公開後に新規ページや機能が追加される
  • 更新作業の中で、意図せずアクセシビリティが損なわれてしまう
  • 担当者の異動や制作ベンダーの変更でノウハウが継承されない

このような事態を防ぐには、単発的な対応ではなく、改善と運用のプロセスを仕組みとして整備することが不可欠です。

具体的には、

  • 制作・更新時のチェックリスト整備
  • アクセシビリティ対応ルールの社内共有
  • 担当者教育・引き継ぎ資料の整備
  • アクセシビリティ診断・改善サイクルの定期化

といった社内体制づくりが必要になります。

また、法制度やJIS・WCAGといったガイドラインの改訂にも備え、柔軟に見直し・改善できる仕組みをもつことが、長期的なリスク回避と品質維持に直結します。
「今だけ対応すればいい」ではなく、継続的な改善を前提とした組織としての体制が、企業サイトにおけるアクセシビリティ対応の鍵となります。

アクセシビリティ対応が継続的な改善サイクルであることを示した図。現状把握を起点に、改善、運用、見直しを繰り返す循環構造となっており、アクセシビリティは一度きりの対応ではなく、継続的な取り組みが重要であることを表している。

まずは現状を知ることから始める

アクセシビリティ対応を始めるには、まず自社サイトの現状把握が出発点になります。
やみくもに対応項目を増やすのではなく、「今、何ができていて、何が不足しているのか」を知ることで、改善の優先順位や具体的な対応方針が明確になります。

現状診断では、以下のような視点での確認が効果的です。

  • JISやWCAGの達成基準のうち、どこまで満たしているか
  • ユーザーにとって使いづらい箇所がどこか
  • 社内体制や制作フローに課題はないか

なお、当社でもWebサイトの現状を確認する簡易診断サービスを提供しており、課題の洗い出しや改善提案の支援を行っています。
初めてアクセシビリティに取り組む方は、以下の記事も参考にしてみてください。

うちのWebサイトはどうなってる?診断から始めるウェブアクセシビリティ対応

まとめ:アクセシビリティはすべてのユーザーのための基盤

アクセシビリティとは、「あらゆるユーザー」が正しく情報にアクセスできるWebサイトを実現するための基本設計であり、持続的に取り組むべき品質基準です。
国際的・国内的に整備されたガイドラインに基づく達成基準を踏まえ、段階的かつ継続的な対応が重要とされています。

まずは、自社サイトの現状を把握し、達成できていない項目の洗い出しや、運用体制の整備から始めてみましょう。
その取り組みが、すべてのユーザーにとって快適で伝わるWeb体験を支える第一歩となります。

ウェブアクセシビリティのチェック結果から、構築・運用でできる対応例を紹介

Business Architects(ビジネス・アーキテクツ)では、アクセシビリティ達成基準に準拠したWebサイトの制作・リニューアルをはじめ、診断・改善・運用フェーズまでの総合支援を行っています。
「どこから手をつければいいかわからない」「社内に知見がなくて不安」という方も、ぜひお気軽にご相談ください。