令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました。
大規模コーポレートサイト、グローバルサイトを多く取り扱うビジネス・アーキテクツ(以下、BA)のアカウントセールスは、今回の義務化によるWebアクセシ ビリティへの対応をどうみているのかをまとめてみました。
まず障害者差別解消法とは何か?
まず、障害者差別解消法とはどういうものでしょうか?この法の総則に下記のように書いてあります。
この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。
出典 : 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 | e-Gov法令検索. e-Gov法令検索. (参照 2024-04-22)
BAsixsの記事でも詳しく触れておりますので参照ください。 障害者差別解消法の改正で企業サイトがやるべきこと | BAsixs(ベーシックス)
障害者差別解消法が改正された背景
前述した、「障害者差別解消法とは何か?」であったとおり、この背景には法的義務化による障害者差別に対する社会的な意識の向上という側面と、共生社会の実現に向けた、障害者の社会的な参加の促進が背景にあると考えています。
障害者差別解消法の対象となる事業者とは?
義務化の対象事業者とは、下記のように定義されています。
本法における「事業者」とは、商業その他の事業を行う企業や団体、店舗であり、目的の営利 • 非営利、個人• 法人の別を問わず、同じサービス等を反復継続する意思をもって行う者となります。個人事業主やボランティア活動をするグループなども「事業者」に入ります。
出典 : ≪大活字版≫【全体】 印刷用. 内閣府. (参照 2024-04-22)
このように個人・法人、営利・非営利を問わず事業者となっているため、事業を行う全員が合理的配慮の提供を行う必要があります。
障害者差別解消法で変わったことは何ですか?
実際にどのように変わったのでしょうか。
一例として、国土交通省所管事業においての改正と、ニュース画面における事例があります。
国土交通省所管事業においては、今回の改正で過重な負担のない範囲でWebサイトの改良を行うというより具体的な内容にアップデートされています。
改正前
- 法は、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関におけるバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・支援者・介助者等の人的支援及び障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)については、個別の場面において個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとしている。
- このため、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。
- 合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合や障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供ではなく、事前的改善措置の実施も考慮に入れることにより、中長期的なコスト削減
- 効率化につながりうる点は重要である。
- なお、社会情勢の変化に伴い、事前的改善措置と合理的配慮の関係が変わりうることにも注意が必要である
出典 : 国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針.平成29年3月. 国土交通省. (参照 2024-04-22)
改正後
合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る一例としては以下の例が挙げられる。
- 障害者から申込書類への代筆を求められた場合に円滑に対応できるよう、あらかじめ申込手続における適切な代筆の仕方について店員研修を行う(環境の整備)とともに、障害者から代筆を求められた場合には、研修内容を踏まえ、本人の意向を確認しながら店員が代筆する(合理的配慮の提供)。
- オンラインでの申込手続が必要で、ウェブサイトの手続に際しての支援を求める申出があった場合に、求めに応じて代替手段(電話・電子メール・対面等)を提案し、本人の意向を確認しながら対応を行う(合理的配慮の提供)とともに、以後、障害者がオンライン申込みの際に不便を感じることのないよう、過重な負担がない範囲でウェブサイトの改良を行う(環境の整備)。
出典 : 国土交通省所管事業における障害を理由とする 差別の解消の推進に関する対応指針. 令和5年11月. 国土交通省. (参照 2024-04-22)
また、Webサイトのパズル認証は読み上げソフトでは対応できないため、パズル認証の回避はできないかとの相談を受けた例があります。相談を受けた事業者は、特定のユーザーIDに対して、パズル認証を回避できるようなシステムに改修したという事例があります。
- 障害者差別解消に関する事例データベースサイト. 内閣府. (利用 2024-05-16)
Webサイトではどう考えるか?
Webサイトにおいても、「合理的配慮の提供」の義務化の対象が全事業者に拡大されました。よって国土交通省管轄企業が行っているように、サービスなどを伝えるためのWebサイトにおいてもこの合理的配慮が必要となりました。
Webサイトにおける配慮には、サイト利用者の障害の有無やその度合い、年齢、利用環境に拘わらず、Webサイトで提供されている情報やサービスを利用できることを考える、いわゆるWebアクセシビリティの対応が必要となります。
過去にシドニーオリンピックのような訴訟事例などもあったため、Webアクセシビリティを全く考慮できていないことは企業として大きなデメリットになります。以下のページにて、シドニーオリンピックの公式サイトに関するWeb Accessibility Initiative(WAI)のアーカイブ記事(英語)が確認できます。
Webアクセシビリティの対応のメリット
では、Webアクセシビリティへの対応による効果にはどのようなことがあるのでしょうか?
ユーザーの満足度の向上
Webアクセシビリティに対応することにより、年齢・障害の有無・利用環境に関わらず多くのユーザーがストレスなく利用できるWebサイトとなり、満足度を高めることができます。Webサイトにおける満足度は企業のブランディングや各指標の達成などに大きく寄与します。
安心感・信頼感の醸成
Webアクセシビリティ準拠または準拠するための方針などを掲示している場合、そのWebサイトや企業自体の安心感・信頼感を高めます。
SEO(検索エンジン最適化)
Webアクセシビリティに対応することで、ユーザーだけでなく検索エンジンも情報が得やすくなります。適切なソースコードで記述されたWebサイトはブラウザ上で正しい情報としてユーザーに伝えられ、結果、SEOにも寄与します。
海外ユーザー
Webアクセシビリティ対応は、すべての人々に利用しやすいWeb環境を実現するためのものです。よって多言語化をその一環として考慮し、言語が異なる人にとっても使いやすくすることで、より多くのユーザーに情報を提供することが可能になります。
まとめ
企業の社会的な責任として、アクセシビリティに配慮したWebサイトが制作されることは、合理的配慮を行う事業者が増えることであり、私たちがWebサイトを情報インフラとして利用する上でとても大切なことです。
BAでは、アクセシビリティに配慮したWebサイトの企画、制作はもちろん、Webアクセシビリティの診断サービスや実際に障害をもつチャレンジドのユーザーテストなどWebアクセシビリティに関するサービスも多く実施しております。ぜひ一度お問い合わせください。