WebサイトのUXを左右する重要な要素のひとつである「サイト内検索」。コーポレートサイトやECサイトをはじめ、自治体などさまざまなサイトで用いられています。前編「欲しい情報が出てこない要因」ではサイト内検索が形骸化している要因についてお話しいただきました。
後編では、サイト内検索を改善した事例や、改善に伴う難所、AI時代のサイト内検索の在り方について、株式会社ジーニー AI/DX統括本部 営業部 平井孝弥氏と、Business Architects(ビジネス・アーキテクツ、以下BA)セールスグループ アライアンス&パートナーチームの浦が語り合いました。

インタビューを受けた人
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- 平井 孝弥様AI/DX統括本部 営業部(株式会社ジーニー)
大手金融機関を経て、およそ20年間制作会社に勤務。大手企業のWebコンサルティングに従事。サイト内検索GENIEE SEARCHの提案を行う。 2023年にジーニーに入社し、販売 企画や提案営業など、メーカーの立場からプロダクトの導入推進を行っている。
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- 浦セールスグループ/アライアンス&パートナーチーム(ビジネス・アーキテクツ)
2023年にビジネス・アーキテクツに入社。それまではデザイン制作会社のプロデューサーとして様々な規模のクライアントに関わり、webサイトの制作やリニューアルはもちろん、印刷物制作やイベント実施、さらに新規事業や店舗プロデュースなど派生的に関連する業務についても提案し実施してきました。 それらの経験を活かし、クライアントの様々な課題解決の ため、目標実現のプロジェクトを推進のために、与件の整理・管理・進行を担います。
小さな改善で成果を出すサイト内検索|類義語・重みづけ・ログ活用
サイト内検索が改善した事例について伺えればと思います。サイト全体のリニューアルといった大規模な刷新ではなく、小さな改善で成果を生んだ事例はあるでしょうか。
平井氏:まず確実に成果が出る施策のひとつに「類義語の登録」があります。たとえば「費用」で検索された際、「価格」や「料金」も検索結果に表示されるようになれば、ユーザーは求める情報にたどり着きやすくなります。特にコーポレートサイトは、類義語の登録がされていないことが多く、一括登録によって改善するケースも少なくありません。
AI検索を導入することで、類義語の検索に対応するという選択肢もあります。一つひとつ類義語を登録しなくても、AIなら「費用」や「価格」を似たような意味だと理解してくれるからです。
以前、ある自治体のサイトに携わったときは、問い合わせ件数を減らすためにAI検索を導入しました。導入後は問い合わせ件数が半分に減り、月間の検索数が5倍以上に増えていました。検索によって疑問が解決したことで、問い合わせに至らなかったことが伺えます。サイトリニューアルなどの大幅な刷新をせず、改善ができた事例です。
浦:小規模な改善としては、「検索結果の重みづけ」という方法もありますよね?
平井氏:似たような情報が多い場合、優先順位をつけるためにも重みづけは重要ですね。たとえば、タイトルタグには共通の文言が入っているので、H1タグの文言のほうを検索結果の上位に来るように設定する、というケースも考えられます。
あとは、検索フォームへの入力誤りを減らすために、入力の途中でサジェストを表示したり、「よく検索されるキーワード」を表示したり、といった施策を行うこともありますね。
サイト内検索の精度を向上させるには、検索ログの解析も重要だと聞きました。
平井氏:検索ログを見る際に重要なポイントとしては「ゼロ件ヒット(検索結果0件)」ですね。どういった検索キーワードでゼロ件ヒットが起きているかを把握し、対策することが重要です。
ゼロ件ヒットの要因には、ユーザー側の検索キーワードが適切でない場合と、コンテンツそのものがない場合のふたつがあります。過去の事例では、他社の商品名を勘違いして入力しているケースがありました。
当然、そのキーワードに対するコンテンツはないのでゼロ件ヒットになるわけですが、この場合は他社の商品名と自社の商品名を類義語として登録すれば、検索結果から関連する自社製品ページに誘導することができます。
浦:似たような商品を探してたどり着いているわけですから、チャンスを逃すわけにはいかないですよね。
平井氏:そうですね。検索ログを見れば、社名で検索してサイトにたどり着いた人が、次に何を求めてサイト内検索をしているのかも分かります。検索ログは、ユーザーニーズを映す鏡だと言えるでしょう。

サイト内検索の改善を阻む「難所」とは
サイト内検索の改善を進めるうえで、難しいと感じる点、注意すべき点についてお聞かせください。
平井氏:そもそも「構造化」「アクセシビリティ」「SEO」の3つが満たされていないサイトの場合、サイト内検索をどんなに改善しても十分な成果は得られません。
たとえば、営業資料のパワーポイントで使われている図表を、そのまま画像としてサイトに掲載しているサイトがあります。これはアクセシビリティの観点ではNGです。
検索エンジンもAIも、テキスト情報を読み込んでコンテンツの内容を把握します。画像の中身までは理解してくれません。ですので、画像のみで構成されたサイトは何も書かれていないものと同じなんです。
浦:サイトリニューアルの案件でも、リニューアル前の旧サイトが画像を多用しているケースは多いですね。画像に代替テキストが設定されていればまだいいのですが、古いチラシをスキャンしたような画像だとそれもない。一つひとつ時間をかけて、画像から目視でテキストを書き起こした案件もありました。
テキスト情報がないわけですから、サイト内検索以前の問題ということですね。では、構造化やアクセシビリティを満たしたサイトで、サイト内検索の改善が難航するケースには、どんなものがあるでしょうか?
浦:大手企業など、各事業部でコンテンツを所管している場合、事業部間のパワーバランスがWebサイトまで影響を及ぼすことがあります。トップページにどの事業部のバナーを載せるのか、サイト内検索で「どのコンテンツを検索上位に出すのか」などに、各部署での調整が必要になるケースですね。
平井氏:分かります。こうしたケースでは、類義語の登録にも時間がかかります。誰がいつ登録やメンテナンスの作業をするのか、責任の所在が曖昧になりがちですし、所管している部署でしか分からない言葉が出ることもあります。
浦:そういうときは、Web制作側の人間が各部署にヒアリングをして、用語を整理しなくてはいけませんね。ヒアリングの工数を見込んで設計をしなくてはならない、という意味では、サイト内検索を設ける際の「難所」だと言えると思います。
平井氏:もう1つ難所と言えるのが、費用対効果の考え方です。ECサイトの場合は「導入後にどれくらい売り上げがあったのか」といったデータで定量的な評価が可能ですが、コーポレートサイトで費用対効果を測ることは正直難しいですね。
たとえば「特定のコンテンツが何回見られたか」という数字がひとつの指標になるのかもしれませんが、それはあくまで企業が見せたいコンテンツであって、ユーザーが求める情報とは乖離している可能性もあります。
ですので、サイト内検索は「費用対効果を求めるもの」というより、「UI/UXを向上させるために必要なもの」と考えていただいたほうが、実態に近いのではないかと思います。

AIが進化しても変わらない、サイト内検索の「本質」
生成AIの進化により、検索の体験も大きく変わりつつあります。「Googleが検索結果をAIで要約するため、ユーザーがサイトを訪れなくなる」と懸念する声も聞かれる中、サイト内検索に求められるものはなんでしょうか?
平井氏:確かにAIの進化は目覚ましいですが、「公式サイトには正しい情報がある」と思われる方はやはり多いので、その意味ではサイト内検索の価値は劣化しないと考えています。
AIによる検索結果は、100%正しいわけではありません。誤った情報を載せたサイトを学習してしまう可能性もあるからです。ユーザーの行動心理としても、「正確な情報を知りたいときは公式サイトで確認する」のが今のところ自然だと思います。
となれば、公式サイトの存在はこれまで以上に重要なものになるはずです。ユーザーが求める情報を正確に伝えること、サイト内検索の仕組みを強化することが、さらに大事になっていくと考えています。
浦:前編でも触れましたが、近年は企業サイトや自治体サイトのコンテンツが膨大になり、従来のナビゲーションなどでは求める情報にたどり着きにくくなっています。ユーザーの検索行動の変化に追随するためにも、サイト内検索に求められる役割は大きいでしょうね。
今後はサイト内検索にもAIが導入されることになるのでしょうか。
平井氏:弊社のサイト内検索プロダクトでは、既にAIを導入したものを提供しており、検索結果を要約する機能や、検索キーワードの表記揺れを吸収する機能などを備えています。大手企業や自治体からの問い合わせも多く、顧客満足度を向上する手段として、サイト内検索の関心が高まっていると感じます。
AI関連の機能は現在も積極的にアップデートを続けており、Googleの「もしかして」のような類義語のキーワードによる再検索や、自然文による検索の対応も検討しているところです。
最後に、AIが進化しても変わることのない、「サイト内検索の本質」についてお聞かせください。
浦:平井さんがおっしゃったように、「正しい情報をいかに提示するか」に尽きるでしょう。AIによる検索は、ハルシネーションが避けて通れません。データを正しい状態で整えておくことが、今後さらに企業や自治体の責任として求められることになると思います。
平井氏:最近は「LLMO」などのAIに向けたコンテンツ最適化が話題となっています。ただこれも、おそらくSEOが十分にできていることが大前提でしょう。検索エンジンにすら最適化できていないサイトが、AIに最適化できるとは考えにくいからです。
やはり、コンテンツのクオリティのみに固執するのではなく、アクセシビリティやサイト構造化といった基本的な対策に立ち返ることこそが、「本質」なのでしょう。一見、地道で手間がかかるように見えるかもしれませんが、ここを蔑ろにするかしないかで、将来的に大きな差が生まれると考えています。

編集後記
以前からWebサイトの機能のひとつとして用いられてきたサイト内検索。インターネットにコンテンツがあふれ、AIによって検索体験が変化した今だからこそ、「求められる情報を正確に伝える手段」としてサイト内検索の重要性が高まっているとお二人は強調します。
最先端の技術に追従することはもちろん大切ですが、「求められる情報を正確に伝えること」自体は、検索という機能の本質として揺るがないものです。アクセシビリティやサイト構造化といった、ユーザビリティの向上にも通じるものがあるでしょう。
ユーザーにとって利用しやすいサイトとは何か。その基本に立ち返ることを忘れずに、サイト構築やサイト内検索に取り組むことが、普遍的な価値を生み出すのだと感じた対談でした。



