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AEM (Adobe Experience Manager) 導入で解決するグローバルサイトの課題

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小宮山フロントエンドエンジニア(ビジネス・アーキテクツ)

およそ20年フロントエンド実装を専門に活動。一部上場企業のグローバルウェブガバナンス基盤整備を主に手がける。プロジェクトにおいてはテンプレートやコンポーネント開発を中心に担当。ユーザビリティやアクセシビリティ、SEOといったフロントエンド周辺技術に関する造詣も深い。

グローバル企業のWebサイト構築や運用にはさまざまな課題がともないます。
このようなグローバルサイトの課題解決に有用な提案を求める方も多いのではないでしょうか?

この記事ではエンタープライズCMSの代表格とも言える、Adobe Experience Manager(以下、AEM)が、グローバルサイトの課題に提供するさまざまなソリューションをご紹介します。

AEM (Adobe Experience Manager) 導入で解決するグローバルサイトの課題

Adobeの提供するCMSの最高峰:AEM(Adobe Experience Manager)

AEMはAdobe Inc.(以下、Adobe社と称する)が提供するCMSです。調査会社のレポートや評価から、CMSの最高峰と認識されている方も多くいらっしゃると思います。

このようにAEMはCMSとして高度な機能を備えていることとともに、その利用に大きなコストが必要であることをご存知の方も多いのではないでしょうか。

しかし、2020年1月にクラウド版(AEM as a Cloud Service)が登場したことで、従来のオンプレミス版よりもAEMの利用コストを抑えられるようになりました。

ライセンス費にはインフラ費用が含まれており、ページビュー数、データ量、同時編集ユーザー数等によって変動するため、必要以上に高額になることはありません。

※以下、AEMのクラウド版を前提とした内容となります。

Adobe社の概要

AEMを提供するAdobe社は、IllustratorやPhotoshopといったクリエイティブツールや、文書ファイルのPDFの生みの親としてお馴染みの企業です。また、現在では一般的になったサブスクリプションサービス(Adobe Creative Cloud)を、いち早く提供した企業でもあります。

他にも、行動データ解析ツールであるAdobe Analyticsや、パーソナライズツールであるAdobe Targetといった多数のソリューションも提供しています。

AEMの製品構成

AEMは複数の製品で構成されるエンタープライズCMSです。ここではAEMを構成する代表的な製品を4つご紹介します。

AEM Sites

AEMにおいてコンテンツ管理を受け持つツールです。CMSとしてのAEMにおけるコアな部分と言えます。

AEM Assets

AEMにおいてデジタルアセット管理(DAM)を受け持つツールです。強力なアセット管理機能を持っているため、管理するサイトが大規模であるほど、サイトの数がふえるほど効果を発揮することが期待できます。

AEM Forms

AEMにおいてフォームを作成〜公開・更新を容易にするツールです。また、強力な顧客管理機能や分析機能をあわせ持つため、グローバルな顧客基盤管理から利用分析、改善を可能にする強力なプラットフォームです。

AEM Screens

webや印刷物、IoT、モバイルなどに利用しているコンテンツ管理システム(AEM Site)と、アセット管理システム(AEM Assets)をデジタルサイネージにも活用できるようになります。

これによりデジタルメニューボード、実店舗のサイネージ、マップやチケット購入のタッチパネルなどに、リアルタイムでパーソナライズされた動的なコンテンツを容易に配信できます。そのため、一貫したUX(顧客体験)の継続的な提供が可能となります。

AEMが解決するグローバルサイトの課題

本社・本部(ヘッドクォーター)視点

Webサイトの運用や保守に関する全体のコストの低減
これまで担当者自身の手でおこなわれていた作業の多くが、AEMによって効率化あるいは自動化されており、Webサイトの維持のために必要だった人員の低減が期待できます。特に世界各国に拠点を構える多国籍企業様においては、グローバル規模での人員低減に繋がるため、高い費用対効果が期待できます。

グローバル規模での更新性の維持
サイトの複製と自動翻訳で多言語展開をしている場合、起点となるサイト(例えば日本サイトやアメリカサイト)に加えた更新が、他国のサイトにも自動的に反映することが可能です。そのため、運用体制が整っていない国のサイトの更新が滞る、といったことを回避できます。

ウェブガバナンス効果
コンポーネントベースの実装が軸となるため、自ずとトーン&マナーやアクセシビリティが保たれます。また、各種ガイドラインをサイト化してAEMで管理すれば、自動翻訳による多言語展開と相まって、グローバル規模でのガバナンス維持への寄与が期待できます。

セキュリティの向上
AEMにはシステムへの攻撃を軽減するシステム保護の機能がいくつか備わっています。
システムを保護する仕組みを、推奨する手順に従って設定するだけで、システムへの脅威をある程度軽減できるのはAEMならではの強みです。

また、AEMでは編集環境と公開環境がサーバレベルで別れており、正しく設定することでセキュアな編集およびプレビュー環境を構築することが可能です。

運用(オーサー)側の視点

ページ作成効率の向上
軽快な動作、ノーコードによるページ作成、GUIやキーボードショートカット等による高い操作性等が相まって、スムーズな更新が可能です。

公開と同等のプレビュー
他のCMSではプレビューモードで表示されたレイアウトが実際と異なるという場合がありますが、AEMでは実際のページとピクセル単位で完全に一致した状態でのプレビューが可能です。

アセット管理効率の向上
AEM管理下のWebサイトでは製品の画像や図版といったアセットを共有することが可能です。それぞれのWebサイトごとにアセットを用意する必要が無いため管理効率が向上します。

容易なトーン&マナーの遵守
AEMではページ作成のためのコンポーネントや、その土台となるページテンプレートのデザインや機能を、グローバルサイト全体で共通化することが可能です。そのため、運用では適切なテンプレートとコンポーネントを用いることで、グローバル規定のトーン&マナーを容易に再現することが可能になります。

AEMの優れた機能を6つご紹介

AEMにはさまざまな課題へのソリューション以外にも、グローバルサイトの構築・運用に役立つさまざまな機能を備えています。

1.多言語対応

WordPressのような一般的なCMSで複数の言語向けにWebサイトを展開する場合、コンテンツの翻訳やチェック、場合によっては専用のレイアウト調整など、複数の制作ステップが必要となります。AEMは既存のサイトを複製する感覚で他の言語のサイトを作成する機能を備えています。

(例)
アメリカ

  • 英語サイト

カナダ

  • 英語サイト
  • フランス語サイト

インド

  • 英語サイト
  • ヒンディー語サイト

上記のようなサイトを構築したい場合、

  • アメリカの「英語サイト」を作成する
  • アメリカの「英語サイト」のコピーとしてカナダの「英語サイト」、インドの「英語サイト」を作成する
  • カナダの「英語サイト」のコピーとしてカナダの「フランス語サイト」を作成する
  • インドの「英語サイト」のコピーとしてインドの「ヒンディー語サイト」を作成する

といった具合に多言語化が可能です。サイト数や言語数が増えても、素早いサイト構築が可能になります。

AEMによる言語コピーの概念図

翻訳については、複数の翻訳プロバイダーの中から実際に利用する翻訳サービスを選択します。翻訳サービスには機械翻訳や人間による翻訳などがあります。翻訳プロバイダへの依頼はAEMから自動で行うため、サイト管理者は翻訳プロバイダに個別に依頼する必要はありません。

更新時においても、アメリカの「英語サイト」を更新したら、カナダの「英語サイト」および「フランス語サイト」にも自動的に更新が反映される、といったことも可能になります。

マルチサイトマネージャーのライブコピーと言語コピーの機能を使って多言語対応をする方法について、より詳しく解説している記事もありますので、ぜひご覧ください。

AEMでWebサイトを多言語対応する方法 | BAsixs(ベーシックス)

2.複数サイト対応(マルチチャネル)

製品の情報を複数のチャネルに展開する場合、製品の画像や情報をチャネルに合わせた加工や翻訳といった、チャネルへの最適化が必要になりますが、AEMにはこれを支援する機能があります。

例えば新製品情報を

  • コーポレートサイト
  • SNSサイト
  • SPアプリ
  • デジタルサイネージ

といった複数の異なるサイトやメディアに掲載したい場合、AEMでは一元管理が可能です。これらの情報は掲載先に応じて文言や掲載要素が異なることが常ですが、それらの差異を含めて管理できます。

コンテンツフラグメント機能を利用することで、一つのデータから情報を複数のチャネルへ展開したり、複数のページへ展開を手軽に行なうことができます。詳しくは以下の記事をご覧ください。

情報とコンテンツの管理はAEMのコンテンツフラグメントで解決 | BAsixs(ベーシックス)

3.画像への自動タグ付け

CMSにおける画像ファイルへのタグ付けは通常、担当者が手作業で行うことが多いのではないでしょうか。

AEMではこのタグ付けをAIが自動で行います。画像ファイルをシステムに登録する度に、AIが自動でタグ付けするため、サイトの規模が大きくなり扱う画像の数が膨大になっても、画像管理の負荷を最小限に抑えることが可能です。

(例)

タグ付けするアセットの例

上記の画像をAEMに登録すると、

  • BA
  • Business Architects
  • ビジネス・アーキテクツ
  • ロゴ

といったタグが自動で付与されることが期待できます。また、必要に応じて手動でタグの追加、変更、削除も可能です。

画像によっては10個あるいは20個以上のタグが自動で付与され、アセット検索時の利便性にも寄与します。

AEMのデジタルアセットマネジメント(DAM)管理では、画像の自動タグ付けだけでなく、公開管理など抱負な機能があります。多くの機能について以下の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。

AEMのアセット管理でWebガバナンスを強化しよう | BAsixs(ベーシックス)

4.承認ワークフロー

ワークフローとは、あらかじめ設計された一連のステップで構成され、そのステップごとに個別のタスクが実行される機能です。
高いカスタマイズ性を兼ね備えたAEMのワークフロー機能を使うことで、AEMで管理されたコンテンツを公開するまでのさまざまな承認ステップ通りに承認や確認を行うことが可能です。さらに、承認後にページ公開や情報更新を行ったり、設定されたスケジュールに従ってステータスを自動更新することもできます。

この機能を利用することで、Webサイトのガバナンスを保ち、お客さまの企業イメージを損なうことのない正しい情報を、多くの人へ届けることが可能となります。

サイトガバナンスを強化!承認ワークフローで発信メッセージを統一 | BAsixs(ベーシックス)

5.バージョン管理(ブランチ機能)

バージョン管理機能の概念図

AEMにはGitのようなバージョン管理システムでのブランチに相当する機能が備わっています。これを活用することで、

  • 3日後の小規模な更新
  • 1ヶ月後の大規模な更新

上記のような同一ページに対して、公開タイミングが異なる複数の案件の同時進行が可能です。

AEMによる修正の同時進行処理概念図

先行案件で発生した変更を後続案件にマージすることも出来るため、安全に進めることが可能です。

6.視覚的なコメント機能

一般的にCMS上のワークフローでのやりとりはテキストのコメントを中心としたやりとりになりますが、AEMではワークフローで承認者が編集者に差し戻す際に、次の図のように視覚的に伝えることが可能です。

(例)

AEMにおけるコメントの様子

まさに「百聞は一見に如かず」であり、いちいち修正指示書を作成する必要もないため、飛躍的にスムーズな進行が期待できます。

まとめ

今回はグローバルサイトの問題に対してAEMが提供するさまざまなソリューションをご紹介しました。この他にもAEMのさまざまな側面を紹介している記事がありますので合わせてご覧ください。

リニューアルや環境刷新に向けて情報を必要とされている方に役立つ、CMSの比較表を次の記事でご案内しています。

グローバル企業や、複数人・複数部署でサイト更新する担当者におすすめのCMS比較表2022 | BAsixs(ベーシックス)

Webサイトは日を追うごとに拡大を続け、さらに重要な節目では新たなWebサイトが立ち上がります。そしてWebサイトを管理するCMSは単なる更新ツールではなく、サイト運用における基盤としての役割を強めています。

また一度導入したら、他のCMSへの乗り換えは容易ではありません。それゆえに必要なこと、やりたいこと、得られる効果等を見極め、慎重に検討する必要があると言えます。

本記事がグローバルサイトを運営するWeb担当者の皆さまの、課題解決の助けになれば幸いです。グローバルサイトの課題解決に向け、AEMの導入を本格的に検討される場合は、ぜひ私どもまでお問い合わせくださいませ。