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UX改善の実践者が語る「課題解決に導く手法と3つのステップ」

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BAsixs編集部

BAsixsは、社会課題の解決と新たな価値創出をBAグループ全体で目指すためのサービスブランドです。

WebサイトにおけるUXの改善はユーザーの体験価値を高めるための必須事項ですが、以下のような点でつまずいている担当者の方も多いかもしれません。

  • 顧客からの要望が多すぎて、どこから手を付ければ良いのかわからない
  • ユーザーが欲しいといった機能を付けたのに使われない
  • 仮説を立てたがユーザーに響かない施策だった

では、UX改善をどのように取り組めば、成果を導き出すことができるのでしょうか?

本記事では、WebサイトのUX改善に長年取り組んできたデザインとマーケティングの専門家、株式会社ニュートラルワークスの石田 哲也氏と株式会社ビジネス・アーキテクツ(以下、BAと称する)の森 太輔に、課題の抽出方法や改善の進め方について事例を交えて聞いてみました。

UX改善の実践者が語る「課題解決に導く手法と3つのステップ」

インタビューした人

プロフィールアイコン(イラスト):ディレクター/フロントエンドエンジニア 富本
富本ディレクター/フロントエンドエンジニア(ビジネス・アーキテクツ)

地元・愛知の印刷会社や広告会社にてWeb制作に携わる。2014年頃、フロントエンドエンジニアとしてBAに入社。現在、ディレクターとして開発・運用の進行管理やWebサイトのガイドライン作成やコンポーネントの設計・作成を担当しています。好きなキャラクターはリラックマ。イタリアとスイスに行きたい。

インタビューを受けた人

  • プロフィールアイコン(写真):株式会社ニュートラルワークス 石田 哲也
    石田 哲也取締役CMO(株式会社ニュートラルワークス)

    神奈川生まれ。高校卒業後に起業、SEOのみで事業を軌道に乗せる。SEO以外のマーケ手法を学ぶため、ネット広告代理店にて、広告コンサルタントとして従事。その後、メタップスをはじめとした複数のアドネットワーク立ち上げ、ゲーム会社にてゲームプロデューサーやマーケからアライアンスまで幅広い範囲を経験。2018年より現職。

  • プロフィールアイコン(写真):ゼネラルマネージャー/CDO(Chief Design Officer)/人間中心設計スペシャリスト 森 太輔
    森 太輔ゼネラルマネージャー/CDO(Chief Design Officer)/人間中心設計スペシャリスト(ビジネス・アーキテクツ)

    2008年、企業の情報コミュニケーション戦略を実現するプロジェクトを中心に、アートディレクター及びリードデザイナーとしてビジネス・アーキテクツに入社。特に日本の製造業のグローバル展開プロジェクトに長年関わっている。現在はデザイン部門の責任者も務める。

WebサイトにおけるUXの役割と重要性

まず、WebサイトにおいてUXの役割をどのように捉えて対応していくべきなのか?
改めてその重要性を理解するために、UX改善を実践する前に押さえておきたいポイントを3つの視点から聞いてみました。

なぜ必要なのか?UXを改善する理由と目的

UXの役割と改善する必要性について、どのように考えていますか?

森:私は企業Webサイトの改善施策に携わることが多いのですが、企業はWebサイトを通じて自社が伝えたいメッセージや強み、サービスを正しくユーザーに届け、企業の認知度やブランドイメージ向上を目指していることが多くあります。

また上場企業の場合、ユーザーだけではなく投資家への訴求という面でも、Webサイトで快適かつスムーズな体験を提供することは重要です。

より良いUXの実現は、これらの課題の解決や顧客満足度の向上が期待でき、その結果、企業の付加価値も上がると考えています。

石田氏:私たちはUXは目的を達成するための手段だと考えています。目的とは、例えば問い合わせだったり、資料請求だったりとコンバージョンに設定しているものですね。ですので、コンバージョンが思ったように達成できていない場合の施策の一つとして、UX改善があるイメージです。

ユーザーに目的達成につながる特定の感情を抱いてもらう、行動をしてもらうことが重要なので、達成したいものを軸にしてUXを改善することが大切だと思います。

専門家の視点とは?UX改善で欠かせない見方と見せ方

UXを改善するうえで、どのような視点を大事にしていますか?

森:私たちがUX改善を実施するうえで重要なポイントとして考えているのが、デザインとエンジニアリングの両立です。

例えば、多様なデバイスへの最適化や多言語対応、システムに制限がある場合は、環境に適した表示方法やデータ取得方法など、目にみえる表層的な部分から、裏側の構造まで検討する領域が幅広く、デザインとエンジニアリングのどちらか一方では改善できないことがあります。

またもう一つ重要なポイントがあります。それは、お客様にとってサイトを構築することが目的ではありません。、即時的な効果を求められるケースもありますが、お客様が継続して成果を出しながら運用していただくことがもっと重要です。そのために、拡張性や運用のしやすさなどを念頭に置きながら設計に取り組んでいるため、エンジニアリングを無視することは出来ないのです。

石田氏:的確なUX改善を行なうためには、感覚値ではなく、数値やデータをしっかり読み解き改善点を見つけることも重要です。

例えば、問い合わせ件数が欲しいなら、ユーザーを集客して問い合わせフォームに導くための入口から出口までの過程を数値やヒートマップなどで可視化して、どこで離脱しているのかなどを具体的に洗い出します。

ただ、データはあくまでもUX改善のきっかけを探すための手段でしかありません。よって、自らがユーザー視点に立ってWebサイトを辿りながら、どのような不満を感じているのかを確かめ、仮説を立てていくことが大事だと考えています。

森:Webサイトを訪れた方の満足感や、コーポレートサイトに求められるブランドの認知などは数値化されにくく、どのように測るべきか悩ましいところですよね。石田さんはどのように考えていますか?

石田氏:確かに、人の感情まではデータに出てこないので、満足感の判断などは難しいところですね。

数値やデータを分析しても改善点やユーザーに満足してもらえているかわからない場合は、主要なターゲットである被験者にWebサイトを実際に見ていただき、ヒアリングしながら良し悪しを確認することも大事だと思います。

森:適材適所が大切ということですね、同感です。その点では、数値やデータの使いどころとをお客様としっかり共有しておかないと、全く違う改善策を行う恐れがありますね。

写真:二人がPCをみながら会話するシーン

これからどうなる?UX改善の現状と今後のトレンド

UXの役割と改善を踏まえ、今後どのように変化していくと思われますか?

石田氏:トレンドに関しては、AIを含めたツールの技術革新によりWeb解析で新しい変化があると考えています。

例えば、Webサイトやゲームのテストマーケティングを行なう際、以前であれば磨りガラスの後ろからユーザーが実際に体験している様子を見るアナログなユーザーテストなどの手法もありましたが、今ではレコーディングツールを活用して録画データで確認できます。

最近ではGA4やヒートマップなどの可視化ツール、UX改善のアドバイスツールも発達しているので、もしかしたらUX改善をコーディングまで含めて自動化できるツールも今後登場するのかなと感じています。

ただし、それらはあくまでもツールなので、扱う人間側に相応の知識や能力があることが前提です。うまくAIやツールを使えるように私たちも進化しないといけないと思います。

森:AIに関していえば、好きな音楽、興味のある商品選択など、AI技術の進歩により、パーソナライズされた体験が増えてきましたね。AIの活用イメージとして自動化機能や代替作業は想像つきやすいですが、今後もAIが応用される範囲はさらに広がると思います。大量の情報を学習・分析し、活用することで、デザインの方向性をより正確に導き、ユーザーに最適な体験を提供できるようになるのではないでしょうか。

私が、ここ数年のUXに関わるトピックとして気になっているのは、デザインシステムです。企業のビジョンやブランドアイデンティティなど包括的な「デザイン原則」に基づいて、迅速に開発・運用でき、省庁や自治体、多くの企業で導入されているので、今後さらに広がりを見せると考えています。

デザインシステムの詳細については以下をご覧ください。 企業の価値を伝えられるブランディングサイトとは? | BAsixs(ベーシックス)

その他にも障害者差別解消法が2024年4月に改正され、関心を集めているWebアクセシビリティにも注目しています。Webアクセシビリティとは簡単にいえば、障害を持つ方や高齢者の方への対応と捉えられがちですが、本来は身体的な特性や障害に関わりなく、どんなユーザーでも使いやすいWeb設計になっているかということが重要です。
公平に使えること、柔軟に使えることなどWebアクセシビリティには利用者を取り残さないという考え方があり、これはUX改善にも通じることなので、時代の流れとともに個人的にもより関心が高まっています。

石田氏:AIでデザインがつくれるようになった今、森さんたちが行なうデザイナーの仕事はどのようになっていくと思いますか?

森:AIが導き出したデザインは、先ほどの数値やデータのお話と同様にあくまでも「きっかけを探すための手段」として捉えています。その意味では、デザイナー個人のプラスαが付加価値を生むので、本来時間を割くべき人間にしか担えない感情や心理を含むクリエイティブな作業に集中できるようになると思います。
AIがより身近になっていく社会で、両者がお互いの強みを組み合わせていくことが大切になるのではないでしょうか。

写真:森が話しているシーン

UXとUI、CX、Webマーケティングとの共通点と違い

次に、UXを改善するうえで気になるUI(ユーザーインターフェース)、CX(カスタマーエクスペリエンス)、Webマーケティングとの相互関係について聞いてみました。

押さえておきたい、CX>UX>UIの関係と切り分け方

UXとUI、CXの役割をどのように分けて改善施策を考えていますか?

森:それぞれの役割を以下のように考えています。

  • CX:顧客(カスタマー)としての体験全般を指す概念
  • UX:製品やサービスの利用によって得られる顧客の体験
  • UI:ユーザーがサービスを利用する際に触る機器や表示画面など

上記のように境界線が曖昧で相関関係もあるので、改善施策に関しては目的や改善メリットをしっかり見極めて、相互を行き来しながら設計する必要があると思っています。

Webマーケティング目線で見た、UXとの連係

UXとWebマーケティングの共通点と相違点をどのように捉えていますか?

石田氏:マーケティングという大枠の中にWebマーケティングがあり、さらにその中にUXがあると考えています。

マーケティング全体として売れる仕組みをつくり、それをWeb上で行なうのがWebマーケティング。そしてWebマーケティングで目的を達成するためにユーザーに動機付けをする手法の一つに、UXです。

森:石田さんがマーケティングとしてやられていることと、私たちが行なっているUX改善などの活動はすごく近く、本質的には同じことなのかもしれませんね。

石田氏:デザイン視点とマーケティング視点は、入口が違うだけで結果的に目指す目的は一緒なので、お互いの強みを活かしながら最終的に成果を導き、結果を出すのが重要かなと思っていますよ。

UX改善で検証。課題を解決に導く手法と3つのステップ

最後に、UXを改善するための手順について、ポイントを整理しながら聞いてみました。

ステップ1.【現状把握と課題の抽出】既存サイトのチェックポイントは?

UXの課題を見つけ出すために行なっている方法はなんですか?

森:担当者様や、対象となるユーザーへの調査・分析を実施しています。

具体的には、アンケートを含めたインタビューが多いですね。企業様には、組織内や運用面、提供しているサービスなど、現状を把握するためにいろいろな観点で質問を行ないます。

ユーザーインタビューは、ターゲットの年代やWebリテラシーなどをもとに選考して実施することで、顕在化していない課題を見つけ出す有効な手段です。もちろん、お客様が保有しているデータがあれば、数値的に考察する資料として活用します。

また、インタビューはお客様の社内共有や運用体制、UXの改善施策を進める協力体制などプロジェクトをチーミングする際にも役立っています。

UI/UXに関する診断から改善提案についての事例は以下をご覧ください。 UI/UX診断・改善案提案事例 C社様 | BAsixs(ベーシックス)

ステップ2.【改善策を作成】課題解決を導き出すために重要なことは?

課題解決に向けて、どのような方法で改善策を作成していますか?

森:まず、先ほどの調査・分析で得られた課題を整理します。そのうえで、課題に優先順位を付けてビジネスインパクトを見極め、費用対効果についてもお客様と協議しながら実際の制作を進めます。

そこで重要視しているのが、デザイナーの特性を活かしてお客様がイメージしやすいように、最終的なアウトプットに近いプロトタイプを作成することです。これはテキストベースの資料ではなく、お互いの方向性を見極めるのが目的ですので、完成度ではなくスピード感を優先して取り組んでいます。

UI/UX向上を目的とした運用での施策実行や業務におけるプロセス改善の伴走事例については以下をご覧ください。 UI/UX向上を目的とした業務プロセス改善事例 H社 | BAsixs(ベーシックス)

ステップ3.【改善策を検証】より効果的にブラッシュアップする方法は?

改善策の検証と効果測定の方法はどういったものですか?

森:事前に検討した改善策をもとに考えた仮説とシナリオを検証するため、実際に被験者(想定ターゲット)の反応を見ながら進めるユーザーテストを実施。そこで得られた気づきをさらなる改善に役立てています。利用者のフィードバックを参考に、小さな構築サイクルを繰り返すイメージですね。

ユーザーテストはどのように行なうのですか?

森:仮説をもとに複数のシナリオを用意する場合もありますが、すべてのシナリオを試すのではなく、事前に方針を定めたベースのシナリオで検証・テストをします。

ユーザーテストでは、多角的な視点で検証することが重要なので、ターゲットとなり得る幅広い方々にWebサイトを使用していただくことがポイントです。

検証について、Webマーケティングの視点ではどこに注目しますか?

石田氏:マーケティングの観点では、そもそも施策を実行する前に、どこをどれだけ改善したいのか、目的と改善項目について定義をします。そして施策実施後に、改善された具体的な数値を見て効果を検証するのが基本ですね。その後はPDCAサイクルを回して、施策ごとの効果をまとめることで、数値の改善確度は上昇するはずです。

写真:石田氏が話しているシーン

BAがオススメする課題を解決に導くための第一歩

BAがオススメする課題を解決に導くための一歩として「UI/UX診断サービス」を活用するメリットを教えてください

森:BAのUI/UX診断サービスは、さまざまなお悩みを抱えているお客様にとって、課題抽出から改善に向けた企画立案のファーストステップまで、一貫してご活用いただけます。

  • お客様の抱えがちな悩みとして以下があげられます。
  • 客観的な視点で施策効果を検証したい
  • 効果的にサイトが運営できているか心配
  • どこから改善したら良いのかわからない
  • リソースやスキル不足で社内対応が難しい

上記のような悩みを抱えるお客さまにも、UI/UX診断サービスの結果からUXの改善施策に向けたヒントや気づきが得られると思います。調査コストを抑えて次のステップに進みたい方はぜひご検討ください。

UI/UX診断サービスの詳細については以下をご覧ください。 価値あるユーザー体験を届ける為に〜UI/UXの改善が重要な理由〜 | BAsixs(ベーシックス)

まとめ

今回は、デザインとマーケティングそれぞれの専門家の視点で、UX改善の目的や役割、施策の考え方や見るべきポイント、進め方などについて多くのヒントや知見を伺うことができました。

特に、UX改善の課題を抽出する上で、数値やデータはUX改善のきっかけを探す手段であり、ユーザーへのインタビューなどと合わせた分析が重要であること。
また、課題解決に向けては、継続して成果を出すために拡張性や運用のしやすさを考えた設計が大切になるというお話には納得感があり印象に残りました。

写真:BAsixsロゴのあるエントランスで石田氏と森が並んでいる

では、目の前の課題解決だけでなく、Webサイトを通じたユーザーの体験価値を長期的な目線を含めて改善・向上させるためにはどのようにすればよいのか?
客観的な視点で改善施策に向けたヒントや気づきを提供するUI/UX診断サービスは、その第一歩として手軽に活用できるのでぜひご検討ください。