BAsixs(ベーシックス)

BAsixsは、ビジネス・アーキテクツが運営する
「あたりまえ」をアップデートしつづけるメディアです。

メンバーズ×BA 合同ワークショップの舞台裏 他社との交流で得られる新たな視点

読了目安 : 10

  • 投稿日 :
  • 最終更新日 :

この記事を書いた人

プロフィールアイコン(イラスト):BAsixs編集部
BAsixs編集部

日々の業務の中で「あたりまえ」をアップデートできた取り組みを発信しています。

2026年5月22日、株式会社メンバーズ(以下、メンバーズ)とBusiness Architects(ビジネス・アーキテクツ、以下BA)による若手社員の育成を目的とした合同ワークショップが開催されました。

タイトルは「情報設計パズルワークショップ」。上流工程のひとつである「情報設計」を、紙のパーツを並べ替えながら体験する内容です。参加者の職種はデザイナーやエンジニア、ディレクターなど幅広く、経験年数も1年未満から5年以上までさまざま。普段接することのない他社のメンバーとのディスカッションを通じて、与えられた課題に取り組んでいました。

ワークショップ当日の様子や、参加者が情報設計に取り組む過程は、前編の記事で詳しくレポートしています。

後編となる本記事では、両社にとって初の取り組みとなった合同ワークショップが、どのような狙いで開かれたのかを掘り下げます。背景にある課題感や、ワークショップの設計方針などについて、今回のワークショップを企画したメンバーズの本庄氏、小林氏と、BAの森、水戸が振り返ります。

メンバーズ×BA 合同ワークショップの舞台裏 他社との交流で得られる新たな視点

インタビューした人

プロフィールアイコン(イラスト):マーケター 田代
田代セールス&マーケティンググループ/マーケター(ビジネス・アーキテクツ)

広告代理店にてマンションデベロッパー、人材派遣の広告・マーケティング業務に携わった後、システム開発会社にて製薬会社や生命保険会社のマーケティング支援に従事。エンドユーザーに対してWebやメールを活用してのコミュニケーションの運用、改善、最適化などを中心に業務を担当。直近ではオウンドメディアの編集長として自社への引き合いを増やす役割を担った。

インタビューを受けた人

  • プロフィールアイコン(写真):アートディレクター/シニアUIデザイナー(株式会社��メンバーズ) 本庄 理恵様
    本庄 理恵様アートディレクター/シニアUIデザイナー(株式会社メンバーズ)

    2019年に株式会社メンバーズに中途入社。UI領域の設計・実装を専門とし、デザインシステムの構築・運用を軸に活動。前職でCMSのコーディングに携わっていた経験を活かし、デザインとエンジニアリング双方の視点を持ちながら、再現性と拡張性を兼ね備えたコンポーネント設計に強みを持つ。単なる画面デザインにとどまらず、実装のしやすさや運用フェーズまで見据えたルール・ガイドラインの整備を得意とし、デザインと開発の橋渡し役を担っている。また、チームリーダーとして若手メンバーの育成にも継続的に取り組み、日々の制作サポートからスキル面でのフィードバックまで、実務を通じたOJT的な指導を行っている。

  • プロフィールアイコン(写真):アートディレクター/カスタマーサクセスプロデューサ(株式会社メンバーズ) 小林 梨子様
    小林 梨子様アートディレクター/カスタマーサクセスプロデューサ(株式会社メンバーズ)

    Web領域のアートディレクションを専門とし、大手企業のデジタル戦略を9年支援。上流工程から丁寧なヒアリングで本質的な課題を抽出し、UX設計・Webデザインを通じて、事業目標達成につながるデザインアクションプランまで一気通貫で監修。20名以上の若手デザイナーを育成し、現在は10名体制のチームマネージャーを務める。

  • プロフィールアイコン(写真):CDO(Chief Design Officer)、人間中心設計スペシャリスト 森
    クリエイティブグループ/マネージャー、CDO(Chief Design Officer)、人間中心設計スペシャリスト(ビジネス・アーキテクツ)

    2008年、企業の情報コミュニケーション戦略を実現するプロジェクトを中心に、アートディレクター及びリードデザイナーとしてビジネス・アーキテクツに入社。特に日本の製造業のグローバル展開プロジェクトに長年関わっている。現在はデザイン部門の責任者も務める。

  • プロフィールアイコン(写真):デザイナー 水戸
    水戸クリエイティブグループ/リーダー/デザイナー(ビジネス・アーキテクツ)

    Web制作会社数社でのデザイン経験を経て2017年にBA入社。入社後はLP〜大規模な案件まで複数案件の情報設計・デザインに携わり、現在はこれまでの経験を活かして客先常駐中。2020年 UD検定初級、2023年 人間中心設計スペシャリストの資格取得。 人に恵まれていることに感謝しつつ、毎日やりがいと面白さを感じながら課題解決のために日々奮闘しています。

2社合同でワークショップを行う意義とは

はじめに、2社合同でワークショップをやることになったきっかけを教えてください。

森:メンバーズさんとの情報交換をするなかで、互いに学べる機会を作れないかという話が出たことがきっかけです。両社ともデザインチームを持っており、共通の課題もあって、一緒になにかできないかと。最初はそんな感じのラフな話から始まりましたね。

本庄氏:そうでしたね。私たちも、とてもいい機会だなと思いました。せっかく同じような業態でお仕事をさせていただいている2社なので、業界全体を盛り上げるという点でも意義があるなと。

森:せっかく一緒にやるのなら、社内だけでは得られない視点や刺激を持ち帰ってもらいたい。とくに、経験年数が近いメンバー同士が、会社の枠を越えて同じテーマについて考えることに大きな価値があると考えました。そこで、講師が登壇して研修を行う形ではなく、参加者が主体的に手を動かすワークショップの形を取ることにしました。

写真:情報設計パズルワークショップを企画した4人の集合写真

ワークショップによって、どのような課題を解決したいと考えていたのでしょうか?

小林氏:2社に共通していた課題は「若手デザイナーが情報設計に携わる機会の少なさ」でした。情報設計を含む上流工程はディレクターが担うケースが多く、若手デザイナーはビジュアルなどの表層的な部分がメインになりがちです。とくにメンバーズの場合は若手の数が多く、情報設計に携わる機会がうまく全員に行き渡らないという課題もありましたので、このワークショップが情報設計を実践する機会になればと考えました。

水戸:若手に視野を広く持ってほしい、という思いもありましたね。表層的な部分に携わっていると、パーツ単位で物事を判断するなど、考え方がどうしても近視眼的になりがちです。「このページで伝えたいことはなにか」「全体としてどういう順番で見せるのがベストか」といった大枠の部分を考えられるようになるためにも、一段上の視点を身につけてもらえたらと。

森:視点という意味では、「外の視点」も重視しました。同じメンバーと仕事を続けていると、進め方や判断基準が自然と「うちのやり方」で固まっていきます。他社ならどう考えて判断をするのか、そうした「外の視点」に触れる機会が乏しいままでは、自分たちの当たり前を疑うことができませんし、強みや課題にも気づきにくくなってしまうでしょう。

他社のメンバーと一緒に考え、自分の意見を伝え、異なる考えを受け止める。今回のワークショップでは、そうした経験を得てもらうことも重視しました。情報設計はデザイナーだけで考えるものではないため、ディレクターやエンジニアなど、ほかの職種にも声をかけることにしました。

写真:情報設計パズルワークショップを企画した4人の座談会の様子

アナログな方法で情報の優先順位を考える「情報設計パズル」

両社が抱える課題を解決するにあたり、ワークショップの内容はどのように設計していったのでしょうか。

森:最初に話があってから約半年間、週1回ミーティングの場を設けて、ワークショップの内容を詰めていきました。ディベートやロールプレイングなどのアイデアをお互い持ち寄って、最終的に20案ほど検討しましたね。そのなかのひとつが、水戸さんが発案した「情報設計パズル」でした。

水戸:これはもともと、森さんの手法がベースなんです。森さんがADを務めていた案件で、実際のページをセクションごとのパーツに分け、それを印刷して発泡スチロールに貼り、クライアントに配って一緒に情報設計を考えたことがありました。当時、私はデザイナーとして参加していて、「相手を巻き込みながら考える」という進め方がとても印象に残っていました。

そこで、これを今回のワークショップに活かせないかと考えました。実在するサイトのパーツを「お題」として用意し、参加者のチームに配ります。参加者たちには、元のサイトを見ずに、パーツを組み合わせて最適な情報設計を考えてもらう。そして最後に、各チームに成果を発表してもらう、という流れです。

写真:座談会で発言するBA水戸

こうした手法は、情報設計においては一般的なのでしょうか?

小林氏:「セクション単位で大枠の訴求方針を組み立てる」という発想自体は、情報設計の現場では一般的なアプローチですね。これをパズルの形に落とし込んだ部分がオリジナルで、アイデアを聞いたときはとてもおもしろいなと感じました。あらかじめ完成したパーツが用意されているので、UIなどの細部にこだわることなく、全体の流れに意識が向けられる点もいいなと思いました。

この「情報設計パズル」によって、どんなスキルが身につくことを期待されましたか?

小林氏:情報の優先順位を決める力や、設計の理由を説明する力、そしてページ全体を導線として捉える視点が養われることを期待しました。ページを「情報の置き場の集合体」ではなく、「ユーザーの思考と行動が進んでいく道筋」として見られるようになることを狙いとしています。

水戸:「情報設計パズル」には正解はありません。だからこそ「チームでどう考えるのか」が重要になります。本番では、既存サイトのパーツ以外に、独自の情報を追記できる「Xカード」を1枚以上使うというルールにして、自分たちの解釈を加える余地も残しています。全員で手を動かしながら、議論を深めてもらえればと考えました。

写真:座談会で発言するメンバーズ小林氏と本庄氏

他社メンバーだからこそ得られた実務に活かせる学び

ワークショップ当日、参加者の様子はいかがでしたか?

本庄氏:皆さん、初対面とは思えないほど議論が盛り上がっていましたね。自発的に自己紹介や名刺交換を始めるチームもいて、早い段階から自然に会話が生まれていたのが印象的でした。

森:予想外でしたよね。初めての試みなので、最初はよそよそしい感じになるのかなと思っていたんですが、場が温まった状態でワークショップに入れたので、とてもよかったです。

小林氏:むしろ、普段他社の人と話す機会がないからこそ、一気に距離が縮まったのかもしれませんね。ある程度年次が近いメンバーで構成したのもよかったと思います。

本庄氏:ディスカッションの時間を25分に設定していましたが、だいぶ足りていなかったですよね。それでも、各チームが短い時間できちんと結論をまとめていたので、すごいなと思いました。

こうしたワークショップでは、ファシリテーターが議論の輪に入ることもあります。そうしたサポートについてはどう想定されていましたか?

森:あまり私たちが意見を言いすぎると、グループワーク自体が機能しなくなるので、極力見守るスタンスを取っていました。ただ、ほとんどサポートは必要ありませんでしたね。全員が満遍なく議論に参加していて、普段接点のない人と一緒に考えること自体を楽しんでいるように見えました。

小林氏:ディスカッション後の発表も、全体的にクオリティが高かったですね。

森:発表についてはゲーム性を少し持たせたんですよ。こういうワークショップでは、誰が発表するのかなかなか決まらないので、サイコロを振って決めるようにしたんです(笑)。盛り上がってもらえましたし、その場で発表者となった人がすぐにプレゼンをしてくれたので、とても立派だなと思って見ていました。

本庄氏:業界に長くいると、どうしても過去の経験に頼りがちになってしまうので、若手の皆さんの柔軟な発想がとても新鮮でしたね。「そういう考え方もおもしろいな」と、個人的に気づきを得る機会にもなりました。

写真:和やかな座談会の様子

ワークショップ後に参加者から寄せられたアンケートのなかで、印象的なコメントはありましたか?

水戸:みんな自分の言葉でしっかり感想を書き込んでくれて、それだけ手応えのある時間だったのだと感じています。なかでも印象深いのが、「意見が分かれたときに、ユーザー理解と情報の優先度に立ち返って整理する過程は、今やっているコンポーネント設計にも取り入れられそうだ」という趣旨のコメントでした。自分の普段の仕事に引き寄せて捉えてくれて、まさにこういう学びを持ち帰ってほしかったと感じました。

小林氏:「実案件のUI改善に携わる中で、意思決定層から提供された情報設計の観点で疑問を感じることがあり、その疑問を放置せず議論にぶつけていきたいと思った」というコメントもありましたね。言われたとおりに受け入れるのではなく、背景まで読み取って改善案を提案できるようになってほしいと考えていたので、私たちの意図が伝わったことを実感しました。

本庄氏:想像以上にこのワークショップをプラスに捉えてくれたメンバーが多くて、開催した甲斐があったと思いました。

視点の違う相手との建設的な議論を経験する重要性

今回のワークショップの内容を、今後自社の業務にどのように活かしてほしいですか?

小林氏:最初から目先の細かい部分にとらわれず、まずは「目的は何か」「何をさせたいのか」「大きなストーリーをどう作るべきか」を考えて、俯瞰からクローズアップへと段階的に捉える視点を持ってほしいと思っています。大きな流れを見ながら、点としての作業にも意識を向けられる力につながれば嬉しいです。

水戸:情報設計に唯一の正解はないので、チーム内で「何を基準に良し悪しを決めるか」という評価軸を揃えておくことも大切です。そこが共有できていれば、意見が分かれても建設的な議論ができます。最終的には、お客さまとその先のユーザーの双方にとって一番いい形は何かを、自分なりに考えて提案できるようになってもらいたいですね。

本庄氏:今回の経験を情報設計の業務に活かせるのが一番ですが、全員が明日から情報設計を担当できるかというと、案件の都合もありなかなか難しいのが正直なところです。ただ普段の業務でも、誰かと合意形成をするといった場面で、この日の経験を活かすことはできるでしょう。社外の方々と、ひとつのゴールに向けて議論を深める経験が積めたことに、自信を持ってもらえたらと考えています。

森:自分の職種や担当範囲だけで物事を見ない姿勢を持ち帰ってほしいと思っています。デザイナー、ディレクター、エンジニアでは、それぞれ重視する点や見えている課題が異なります。その違いを対立として捉えるのではなく、よりよいものをつくるための材料として扱えるようになることが大切です。対話を通じて判断を前に進める経験を、日々の仕事に活かしてほしいですね。

写真:座談会で発言するメンバーズ本庄氏と小林氏

最後に、今後の展望について聞かせてください。

森:一度きりのイベントで終わらせず、新たな学びの機会として継続していきたいと考えています。テーマについても、デザインの判断、プロジェクトの進め方、職種間の連携、若手の育成など、両社が共通しているものは多くありますので、それぞれの実践や課題を持ち寄り、一緒に考える場にしていきたいです。

小林氏:より実践的で、ハードルの高いワークショップも開催してみたいですね。たとえば「クライアントと合意形成をする」といった場面は、仕事だといきなり本番を迎えることが多いですよね。これを実践形式のワークショップでリアルに経験できたら、かなり違うと思うんです。

水戸:わかります。うまく話せなくてとても落ち込んで、一人反省会をしたことを思い出しました(笑)。当時そんなワークショップがあったら、ぜひ参加したかったです。

本庄氏:BAさんとのワークショップは、すでに次回に向けて動き出しているところです。今後さらに別の企業も加わる形で開催できたら、という話もしていますね。クリエイターを育成する機会として、ぜひこれからも続けていければと思いますし、こうした環境を作り続けるのもマネジメントレイヤーの仕事であると認識しています。このワークショップを通じて、参加者の皆さんに自分なりの武器を見つけてもらえたら嬉しいです。

まとめ:会社を越えた学びが若手の自信につながる

両社にとって初の試みである合同ワークショップは、運営サイドの予想を上回るほど活発な議論が行われました。その様子は参加者のアンケート結果にも表れており、ワークショップが両社にとって大きな刺激になったことがうかがえます。

実際の業務では、クライアントをはじめ社外のさまざまな人とのコミュニケーションを取りながら合意形成していくプロセスが欠かせません。今回、会社も職種も異なるメンバーと課題に取り組み、議論を交わす経験を積んだことは、若手がこの先のキャリアを歩むうえで、大きな自信につながるものになったのではないでしょうか。